鉄欠乏性貧血
てつけつぼうせいひんけつ

最終編集日:2022/1/11

概要

鉄欠乏性貧血は体内の鉄分が不足し、赤血球中のヘモグロビンの産生量が減少することで起きる貧血です。ヘモグロビンの生成がうまくいかなくなると全身に十分な量の酸素を運搬できなくなるため、倦怠感やめまいなどの貧血症状が現れます。

月経があり、妊娠や出産を経験する年代の女性の3人に1人ほどは体内に蓄えられている鉄分が欠乏した鉄欠乏状態にあります。そのため鉄欠乏性貧血は、貧血の中でもっとも多い病気となっています。

原因

鉄欠乏性貧血の原因は、体内の鉄分不足です。鉄分が不足する理由には以下のことが考えられます。

・鉄分の摂取・吸収不足

鉄分は食べ物から摂取するほかなく、偏った食事によって摂取量が不足する、または病気の治療で胃腸切除などをしたことで吸収力が低下するため。

・鉄分の喪失量増加

月経や消化管出血によって喪失量が増加するため。

・鉄分の需要増加

成長期や妊娠・授乳に伴って必要な鉄分需要量が増加するため。

症状

おもな症状として、全身倦怠感、疲れやすさ、めまい、頭痛、動悸、息切れ、耳鳴り、顔面の蒼白などがあります。そのほか、つめが薄く平坦になるスプーン状つめや口角炎、嚥下障害、異食症などの症状がみられることもあります。

ただし無症状の場合もあり、そうした人の多くは定期的な健康診断で発見されています。

検査・診断

鉄欠乏性貧血は、採血による血液検査を行い、ヘモグロビン(血色素:Hb)の量などで診断されます。


ヘモグロビンの基準値(異常なし)※健診機関によって異なります。

・成人男性:13.1~16.3g/dL以下

・成人女性:12.1~14.5g/dL以下

血液検査では、ヘモグロビン値のほかに赤血球の大きさも調べます。貧血の場合は小さくなります。

採血を使った生化学的検査では、からだの中に蓄えられている鉄分の量を表す血清フェリチン値が低下していないか、鉄分を運ぶ血液中のたんぱくが異常に増加していないかなども調べます。

治療

鉄分を増やすため、内服薬や注射による治療が行われます。

まずは鉄剤の経口摂取から始め、改善しない場合には注射による治療が行われます。経口鉄剤を摂取しても、回復までには数カ月から1年ほどかかるケースもあります。

また、食事療法を中心とした生活改善も必要です。もちろん、慢性的出血がある場合はその対処が必須です。

セルフケア

予防

鉄欠乏性貧血の予防には、食生活の見直しが不可欠です。鉄分は吸収率の低い栄養素なので、毎日の食事から十分にとることが必要です。

・栄養のバランスを考え、毎日3食を食べる

・鉄分を多く含む食品をメニューに加える

レバ-、赤身の肉類、かつおやまぐろ、アサリ、シジミ、カキ、大豆製品、緑黄色野菜、ひじきなどの海藻類に多く含まれています。

・たんぱく質を十分にとる

魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質を多く含む食品を、毎食バランスよく食べるようにします。

・食事中にはタンニンを含む飲料(緑茶、コーヒーなど)を控える

緑茶や紅茶、コ-ヒ-にはタンニンが多く含まれています。タンニンは鉄分と結合しやすいため、せっかくとった鉄分の吸収率が悪くなってしまいます。

貧血は重篤な病気の症状として現れることもあります。貧血症状が長期間つづいたときには早めに医療機関で診断を受けることをおすすめします。

監修

寺下医学事務所医学博士

寺下謙三

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