再生不良性貧血さいせいふりょうせいひんけつ
最終編集日:2022/3/30
概要
骨髄の造血幹細胞(血液をつくり出す細胞)が減少して、造血能力が著しく低下する病気を再生不良性貧血といいます。先天性と後天性に大きく分けられますが、わが国では後天性がほとんどを占めています。後天性の再生不良性貧血は、さらに原因不明な「特発性」と、薬剤や放射線、ウイルスなどが原因で起こる「二次性」とに分けられます。再生不良性貧血は、国が定める「難病」に指定されています。
原因
再生不良性貧血の原因ははっきりわかっていませんが、骨髄の造血環境の異常や造血幹細胞自体の異常が関係していると考えられています。造血幹細胞とは骨髄のなかにあり、赤血球、好中球(白血球)、血小板のもととなる未熟な細胞のことです。赤血球、好中球、血小板は骨髄で絶えずつくられ、成長し完成するため、骨髄や造血幹細胞に異常があると、減少してしまうのです。
症状
一般的な貧血症状に加えて、赤血球、好中球、血小板のうちどれが少ないのかによって現れる症状も異なります。
酸素を運搬する赤血球が減少すると、酸素が欠乏するため、だるさや動悸、息切れなどが現れます。
免疫細胞のひとつである好中球(白血球)が減少すると、免疫機能が低下するため、肺炎などの細菌感染症や発熱などを起こしやすくなります。
止血作用を担う血小板の減少では出血しやすくなり、なかなか血が止まらないなどの症状が起こります。ただし再生不良性貧血では血球の数は減りますが、それぞれの血球の形態や機能などは正常に保たれていることが多いようです。
検査・診断
再生不良性貧血では、血液検査、骨髄検査、画像検査などが行われます。
●血液検査
血液細胞数の異常の有無を調べます。赤血球、好中球、血小板がすべて減少している場合は再生不良性貧血を疑います。
●骨髄検査
骨髄の状態を調べる検査です。骨髄穿刺と骨髄生検があります。
・骨髄穿刺
骨髄液を採取して「染色体検査」や「細胞表面マーカー検査」などを行います。
・骨髄生検
骨髄組織片を採取して細胞の密度を調べます。
●画像検査(MRI、PETなど)
背骨の画像を撮影し、全身的な造血状態を調べます。
血液検査で赤血球、好中球、血小板のうち2種類以上が減少している場合に、骨髄検査を行います。この検査で再生不良性貧血以外の病気が除外されてはじめて確定診断が下されます。
治療
再生不良性貧血の治療法には、免疫抑制療法(薬で造血幹細胞を傷害しているリンパ球を抑えて造血機能を回復させる治療法)、骨髄移植(骨髄細胞を他・人の正常な骨髄細胞と取り換える治療法)、たんぱく同化ステロイド療法(蛋白同化ステロイドという薬で造血幹細胞の増殖を促す治療法)などがあり、病状や進行度合いによって治療法が決まります。近年では血小板産生を促すトロンボポエチン受容体作動薬も使われるようになりました。
セルフケア
予防
再生不良性貧血のほとんどは原因を特定できないので、特別な予防法はありません。
血縁者に先天性の再生不良性貧血患者がいる場合や、薬剤や放射線などの暴露を受けた場合には専門の医療機関での検査が必要です。
また再生不良性貧血は健康診断で見つかることが多い病気です。
監修
寺下医学事務所 医学博士
寺下謙三
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