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悪性貧血
あくせいひんけつ

最終編集日:2026/3/23

概要

悪性貧血は、自己免疫性胃炎によってビタミンB12が体内に吸収されにくくなることで起こる貧血です。通常、ビタミンB12は胃から分泌される「内因子」というたんぱく質と結びつき、回腸(小腸の最後の部分)から体内に吸収されます。しかし悪性貧血では、この内因子が十分に分泌されなくなるため、食事に含まれるビタミンB12をうまく吸収できなくなります。

ビタミンB12は、赤血球を正常につくるために欠かせない栄養素です。そのため、不足すると赤血球の数が減るとともにサイズが通常より大きくなるタイプの貧血(大球性貧血)が起こります。さらに、ビタミンB12は神経の働きにも重要なため、不足が続くと、しびれやふらつきなどの神経症状が現れることがあります。

なお、ビタミンB12や葉酸の欠乏、あるいはその代謝異常によって起こる大球性貧血は、医学的には「巨赤芽球性貧血」と総称されます。悪性貧血はその代表的な原因のひとつです。

原因

悪性貧血の原因は、自己免疫性胃炎です。これは本来、体を守るはずの免疫の働きが誤って自分自身の胃粘膜を攻撃し、胃の壁細胞や内因子を障害してしまう病気です。

その結果、食事から摂取したビタミンB12が回腸で十分に吸収されなくなり、体内で不足して発症します。ただし、ビタミンB12は肝臓に数年分が蓄えられているため、吸収が障害されてもすぐに症状が現れるわけではありません。多くの場合、体内の貯蔵が減少して欠乏状態になるまでに数年かかるのが特徴です。

症状

おもな症状として、全身のだるさ、息切れ、動悸、めまいなど、一般的な貧血の症状がみられます。また、舌の炎症による舌の痛みや、食欲低下、下痢などの消化器症状が現れることもあります。さらに病気が進むと、ビタミンB12不足による神経症状が現れることがあります。手足のしびれや感覚の低下、ふらつき、歩きにくさなどがみられるほか、脳への影響として、物忘れ、集中力の低下、気分の落ち込みなどの症状が現れることもあります。

検査・診断

まず血液検査で貧血の有無を調べるとともに、赤血球の大きさを確認します。悪性貧血では赤血球が大きくなる「大球性貧血」を示すため、平均赤血球容積(MCV)の高値が診断の手がかりとなります。

さらに血清ビタミンB12値を測定し、欠乏の有無を確認します。必要に応じて、抗内因子抗体や抗胃壁細胞抗体などの自己抗体を調べることもあります。ただし、これらの抗体が陰性であっても、悪性貧血を完全に否定することはできません。

また、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を行い、胃粘膜の萎縮の程度や、自己免疫性胃炎に特徴的な所見の有無を確認することもあります。骨髄検査は通常必須ではありませんが、ほかの血液疾患との区別がむずかしい場合に行われることがあります。

治療

治療の中心は、ビタミンB12の補充です。自己免疫性胃炎ではビタミンB12の吸収に問題があるため、注射による補充が行われることが多いです。状態によっては、高用量のビタミンB12の内服薬で治療することもあります。

治療を始めると貧血は改善していきますが、神経症状は回復に時間がかかることがあります。また、ビタミンB12の欠乏が長く続いていた場合には、元に戻りにくいことがあります。

セルフケア

予防

悪性貧血は免疫の異常によってビタミンB12が吸収されにくくなる病気のため、食事内容に気をつけていても予防することはむずかしいとされています。定期的に健康診断を受けるとともに、上記のような症状が続いた場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。以前は治療がむずかしい病気と考えられていましたが、現在ではビタミンB12を補充することによって、症状や貧血をコントロールできるようになっています。治療開始後は、貧血が改善したからといって自己判断で治療を中断せず、ビタミンB12の補充療法を継続して受けることが大切です。


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監修

東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授

川田浩志