上咽頭がんじょういんとうがん
最終編集日:2025/12/20
概要
鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部分を咽頭および喉頭といいます。咽頭は上から3つに分類され、もっとも上で鼻の突き当たりにあたる部分を上咽頭といいます。この部分にできたがんが上咽頭がんです。
40〜60歳代に多くみられるがんですが、発症率は低く、日本では比較的まれながんのひとつです。
咽頭の周囲にはリンパ節がたくさんあるため、頸部リンパ節転移を起こしやすいことが特徴です。
原因
はっきりとした発生原因はわかっていませんが、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス)感染が、発症に深く関わっていることがわかっています。
このほか、遺伝的な体質、塩辛い食物の食習慣、喫煙と過度の飲酒などもリスクを高める要因と推察されています。
症状
初期症状には、滲出性中耳炎を生じることによる耳がつまった感覚や聞こえにくさ、鼻づまり、鼻血を繰り返すといった症状が見られます。がんが進行して脳神経に影響が及ぶと、ものが二重に見える(複視)、顔のしびれや痛みが出るといった症状が現れることがあります。
ただし、こうした症状はかぜや副鼻腔炎などでも見られるため、「がんによる症状」として自覚されにくく、気づいたときにはある程度進行していることも少なくありません。発見時の特徴的な症状としては、頸部リンパ節への転移による首のしこりが見られることが多いのが上咽頭がんの特徴です。
検査・診断
通常、首のしこりの有無を触診し、鼻や喉をファイバースコープ(内視鏡)で観察して上咽頭に病変がないか確認します。がんが疑われる場合は、組織を採取して調べる生検を行い、顕微鏡でがん細胞かどうかを診断します。
さらに、がんの広がりやリンパ節および他臓器への転移など調べるため、CT検査、MRI検査、超音波検査、PET検査などが行われます。
治療
上咽頭の周囲には多くの重要な脳神経や血管が走行しており、口や鼻から十分に広く切除する手術は技術的にむずかしく、また機能障害も大きくなりやすいため、放射線療法を中心とした治療が標準的です。
上咽頭がんは、放射線に対する感受性が高く、放射線療法単独でもある程度の効果が期待できます。周囲への浸潤や、頸部リンパ節への転移がある場合は、抗がん剤による化学療法を同時に行うことで治療効果が高まることが明らかになっており、放射線療法と化学療法を併用する「化学放射線療法(同時併用)」が行われるケースが増えています。病期や全身状態によっては化学療法を先行させたり、追加で行う場合もあります。
治療後に頸部リンパ節にがんが残ったり、再び大きくなってきた場合には、頸部リンパ節を切除する手術が追加で行われます。また、上咽頭の部位に限局してがんが再発した場合、条件が合えば内視鏡や開頭による腫瘍切除術が検討されることもあります。
セルフケア
療養中
治療の効果を高め、かつ再発を防ぐために、禁煙とできるだけ飲酒を控えることが推奨されています。また、治療による口内炎やのどの痛みで食事がとりにくくなることがあるため、主治医や栄養士と相談しながら、無理のない範囲で十分な栄養と水分を保つことが大切です。
病後
治療が終わったあとも、再発や二次がんのリスクを下げるために、禁煙と飲酒制限を継続することが重要です。
あわせて、定期的な通院での経過観察を続け、首のしこり、鼻血、耳のつまった感じなど、気になる症状が出た場合には、早めに主治医へ相談するよう心がけましょう。
予防
上咽頭がんは、EBウイルス感染や遺伝的素因など、個人ではコントロールしにくい要因も多く、完全に予防することはむずかしいとされています。
EBウイルスそのものの感染を完全に防ぐ方法はありませんが、一般的な感染症対策や、口腔・咽頭の清潔を保つことは、ほかの病気の予防にもつながります。
上咽頭がんは、自覚症状に乏しく、進行してから見つかることの多いがんですが、一方で放射線療法や化学療法に比較的よく反応するがんでもあります。首のしこりや片側の耳がつまった感じの継続、原因不明の鼻血を繰り返すなど、気になる症状がある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
監修
栃木医療センター
小島敬史