口腔がん
こうくうがん

最終編集日:2025/12/20

概要

口腔がんは、口のなか(口腔)にできるがんの総称です。口腔がんには、歯肉がん、舌がん、舌と歯ぐきの間にできる口腔底がん、頬粘膜(きょうねんまく)がん、上あごにできる硬口蓋(こうこうがい)がんなどがあります。

口腔がんのなかでもっとも多いのは舌がんです。すべてあわせても全体がんの約1%と発生頻度は高くありませんが、罹患率・死亡率ともに年々増加傾向にあります。

口腔がんは自分で直接見たり触ったりできる部位にできるがんです。口腔に硬いしこりがあったり、口内炎がなかなか治らなかったりする場合は注意が必要です。

原因

口腔内の衛生状態が悪いことや、むし歯や義歯の不適合などにより慢性的な刺激を受け続けることなどが、リスク要因と考えられています。

喫煙や過度な飲酒も口腔がんの発症リスクを高めます。近年ではヒトパピローマウイルス(HPV)感染も口腔がんのリスク因子として注目されています。

症状

一般に、初期は白あるいは赤いしこりが確認できるだけで、痛みや出血はありません。治りにくい口内炎が症状である場合もあります。進行すると、発症部位からの痛みや出血、悪臭などが現れます。しこりが大きくなると、食べ物が食べにくくなったり、話しづらくなったりすることもあります。

また、口腔がんは頸部リンパ節への転移が多く、その場合は首にしこりを感じることがあります。

検査・診断

視診による病変の確認を行います。直接確認できない場合はファイバースコープなどを用います。頸部リンパ節への転移が多いため、頭頸部のリンパ節を触診し、腫れやしこりの有無を確認します。

さらに、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などの画像検査で病変の広がりや進行度、転移の有無などを判断します。確定診断には病変の一部を採取して病理検査を行うこともあります。

治療

初期の口腔がんは、手術療法が標準治療とされています。進行例や再発例では、手術療法に加えて化学療法や放射線療法を並用することがあります。近年では、再発・転移性口腔がんに対して免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬物療法も使用されるようになり、治療の選択肢が広がっています。

手術では口腔内だけでなく、舌や顔面の一部を切除をすることもあり、術後に食べ物がかみにくくなったり、飲み込みにくくなったりすることがあります。さらに顔面の変形など、QOL(生活の質)や患者さんの精神面に大きな影響を与えることも少なくありません。がん治療とともに、機能面や審美面での再建も重要な課題となります。最近では患部を再建するため、ほかの部位から組織移植を行うケースも増えています。

セルフケア

病後

口腔は飲食や嚥下、言葉を発するなど、とても重要な機能を担っています。手術や治療でこれらの機能に影響が出る場合は、さらなる治療やリハビリが必要になることがあります。医師の指示に従い、定期的な診察や検査、治療などを行い、QOLを維持していきましょう。

予防

口腔内を清潔に保ち、むし歯などがある場合はしっかり治療を行いましょう。義歯のかみ合わせが悪い場合は歯科医に相談し、改善する必要があります。

また、喫煙や過度な飲酒は避け、刺激物の摂取は控えめにしましょう。

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監修

医療法人芯聖会理事長

仮屋聖子