弱視じゃくし
最終編集日:2023/1/24
概要
生まれたときは視力がほとんどありません。視力は、日々ものを見ることによって両目で立体的に見る力(両眼視)を養いながら徐々に発達していき、6歳くらいには完成します。しかし、この時期に何らかの原因でものを見ることが遮られると、視力は発達しきれなくなってしまいます。医学的にはこれを弱視と呼び、眼鏡やコンタクトレンズを用いても視力が上がらない状態を指します。その多くは早く発見して治療を開始すれば改善する可能性が高くなります。日本眼科医会の視覚検査マニュアルには「3歳児健診の視覚検査で発見されると就学までに治すことができるが、8歳頃までの感受性期間を過ぎてしまうと、十分に視力が向上しない」と、記されています。
※医学的弱視以外に、緑内障や糖尿病性網膜症などの目の疾患によって視力が極端に低下し、回復がむずかしい社会的弱視(ロービジョンともいう)があります。ここで説明している弱視は、医学的弱視のことです。
原因
弱視の原因はいろいろあります。代表的なものに、近視、遠視、乱視による屈折異常でピントがあわないために生じる弱視です。両目に強い屈折異常がみられる場合は屈折異常弱視、片方の目に生じているものは不同視弱視といいます。
左右の視線にずれがある斜視によって片方でものを見ることが増え、そちらの視力だけが発達し、もう片方は発達しきれないことでも弱視を発症します。これを斜視弱視といいます。ほかには、眼帯をして片目で過ごしたり、まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂、生まれつきの先天白内障などによって網膜へ光の刺激が届かないことで発症する形態覚遮断弱視があります。
また、これらが重複していることもあります。
症状
よく目を細める、映像などは近寄って見る、おもちゃで遊んだりものを見たりするときに極端に顔を近づける、頭を傾けて見ることが多い、ものにぶつかったり転んだりしやすいといったことが挙げられます。また、弱視になると疲れやすく、集中力がつづかない傾向にあります。乳幼児はたとえ目が見えづらくても自分では気づかず、親に伝えられません。少しでも気になることがあったら放置せず、眼科を受診することが大切です。
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検査・診断
弱視のおもな検査には次のようなものがあります。
●屈折検査:遠視・近視・乱視の測定を行う
●視力検査:裸眼視力・矯正視力を測定する
●眼位検査・眼球運動検査:斜視や目の動きに異常がないか評価する
●調節麻痺下屈折検査:調節麻痺薬を点眼して屈折検査を行う
(アトロピン硫酸塩、シクロペントラート塩酸塩を用いる)
●両眼視機能検査:立体感や遠近感の有無、程度を調査する
●細隙灯顕微鏡検査:角膜・水晶体などに異常がないか確認する
●眼底検査:網膜・硝子体などに異常がないか確認する
上記の検査を行った結果から、弱視であるかどうか、さらに何が原因の弱視であるかが診断されます。
治療
弱視になった原因、および視力が発達できなかった期間や程度などによって治療方法や治療にかかる時間は異なるものの、早期に治療を開始すれば視力の改善が期待できます。
弱視治療の第一歩は、調節麻痺薬を点眼して正確に屈折異常を評価し、その結果をもとに適切な眼鏡を装用させ、網膜に鮮明な像を常に結ばせることです。
●屈折異常弱視……適切な眼鏡を常時装用させることで、視力向上が期待できる
●不同視弱視……眼鏡の常用で視力の向上がみられる。3~6カ月程度、経過をみても視力の左右差が残る場合、1日2~4時間程度の健眼遮閉訓練を行います。訓練による視力の変化を1~2カ月ごとにチェックし、1.0以上に向上したら訓練を中止する。ここで眼鏡の装用も中止すると、再び視力が低下するので眼鏡の装用は継続する
●斜視弱視……適切な眼鏡の常用をさせ、不同視弱視よりも長時間の健眼遮閉訓練を行う。遮閉訓練を行っても斜視眼が固定して交代しない場合や、視線の中心でものをしっかり見る(中心固視)ができない場合には、視力の向上がむずかしいことがある
●形態覚遮断弱視……乳児期の片眼性の先天白内障、眼瞼下垂、角膜混濁などによって生じるため、原因となる疾患の治療を早期に行い、眼鏡(場合によってはコンタクトレンズ)で矯正を行って焦点をあわせ、健眼遮閉訓練を行っていく。ただし、視力向上がもっとも困難といわれている
セルフケア
予防
視力が発達する乳幼児の時期に、目で見て興味を引くものをいろいろ見せてあげることをおすすめします。早期発見・早期治療のためにも、3歳児健診の視力検査を受けるようにし、ふだんの生活で少しでも目が見えづらそうにしていたら、すぐに眼科を受診しましょう。例えば、定期的に、片目を隠して嫌がったりしないかをチェックしたり、片目で絵本を見せて何の絵が描かれているかを答えさせたりするのも弱視の早期発見につながる可能性があります。
監修
井上眼科病院 院長
井上賢治
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