斜視しゃし
最終編集日:2023/1/23
概要
ものを見ようとするとき、両方の目の黒目の向きがそろっていない(右目と左目の視線が同じ方向を向いていない)状態を斜視といいます。片方の目が内側を向くものを内斜視、外側を向くものを外斜視、上を向くものを上斜視、下を向くものを下斜視と呼びます。多くは子どもの症状で子どもの約2%が罹患しているといわれます。子どもの顔、表情、視線を変えたときの目の動きなどで、気づきます。
斜視を放置すると視力の低下や運動能力の低下などにつながるため、早期に発見して適切な治療のタイミングを捉える目的で、3歳児健康診断に眼科健診が組み込まれています。
成人でも全身疾患や頭部のけがなどによって起こり得ます(※成人の斜視については文末参照)。
原因
原因は多岐にわたります。
●眼球を動かす筋肉や神経に異常がある……目には視線を動かしたりピントをあわせたりする筋肉や神経が複数あります。その機能に異常があると、斜視を起こします。
●遠視……遠視があると近くを見る際に目のピントをあわせる調節作用が強く働くため、内斜視になりやすくなります。
●目の病気が原因……両眼視機能(両方の目でものを見る機能)の未成熟・低下、目の外傷などが原因となります。
●脳の病気が原因……目の神経をつかさどる部位の異常、脳腫瘍などが考えられます。
両眼視機能の低下とは、ぼやけたりずれたりするほうの情報を脳が削除するため、片目で見ているのと同じ状態になり、それが継続することによって両目で見るという機能の働きが悪くなってしまうことを指します。
症状
斜視があると、複視(ものがだぶって見える)、両眼視機能の低下、視力の低下などが現れます。両眼視機能が低下すると、例えばものにぶつかりやすい、平均台などのバランスをとる行動やボール遊び(受け取ったり、狙って投げたり)が苦手になるなどが起こります。
常に外斜視が起きているものを「恒常性外斜視」といいますが、恒常性外斜視ではものの立体感が消失します。外斜視が起きていないときがあるものを「間欠性外斜視」と呼び、この場合は斜視にならないように目に力を入れることが多いため、目の疲れを強く訴えます。間欠性外斜視は、起床直後や疲れているとき、明るい場所で起こりやすいとされています。内斜視や上斜視、下斜視では、ものを見るときに顔を斜めにする、首を傾けるなどの行動がみられます。
また、就学年齢になると、見かけ上の悩みを訴えたり、視線をうまくあわせることができないために人と話すのを嫌がったりします。
検査・診断
片目を見えないようにして目のずれがあるか、検査をします(遮閉試験)。恒常性か間欠性かは、意識をして視線をあわせようとしたときにも斜視が起こるかを検査します。
治療
斜視の状態や程度にあった眼鏡の使用、薬物療法(目の筋肉が原因の場合)、両眼視機能を向上させる視能訓練、斜視手術などがあります。斜視の状態・程度、原因、患者さんの年齢、併発している目の症状(遠視や弱視、眼振など)などを全体的に考慮して、治療法を選択します。視力を温存するために、治療のタイミングを見極めて行われます。
セルフケア
療養中
●成人の斜視
成人の斜視も珍しい病気ではありません。
原因として、①子どもの頃の斜視が悪化した、②目の外傷、③脳卒中や脳腫瘍、頭の外傷など、脳の病気、④極度の近視(内斜視)などが考えられます。また、加齢やストレスなどによって、目の筋肉の調整機能が低下し、斜視を起こすことがあります。症状として、複視、目の疲れ、肩こり、頭痛などが現れます。子どもの斜視と同じような検査が行われ、治療法が選択されますが、原因疾患がある場合はその治療も並行して行われます。
監修
井上眼科病院 院長
井上賢治
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