鼻中隔彎曲症びちゅうかくわんきょくしょう
最終編集日:2022/4/21
概要
鼻の穴(鼻腔)を左右に分けている、鼻中隔(びちゅうかく)という、衝立(ついたて)があります。この鼻中隔が大きく彎曲(わんきょく:曲がっている)しているせいで、鼻閉(びへい:鼻づまり)、いびき、嗅覚障害といった症状が現れ、日常生活に支障のある状態が鼻中隔彎曲症です。
通常、鼻中隔はほとんどの人で左右どちらかに曲がっています。少し曲がっていても症状がなければ鼻中隔彎曲症とは診断されません。彎曲が強く、それにより鼻閉などの症状があるといったときは鼻中隔彎曲症の可能性があります。
原因
鼻中隔は、骨と軟骨から構成されています。思春期までの発育の過程で、骨と軟骨の成長速度が異なるため、軟骨部が位置あわせをするように曲がっていくのが、鼻中隔彎曲が生じる典型的な原因です。
鼻を強くぶつけるといった外傷によって彎曲が起こる場合もあります。
症状
鼻中隔彎曲症は、ほとんどのケースで症状もなく治療の必要はありません。
ただ彎曲が大きくなると、鼻閉や息苦しさを自覚するようになったり、嗅覚障害や頭痛が起きたり、いびきをかいたりするようになります。一方で、鼻汁やくしゃみは生じません。
ほかにも鼻血が出やすい、副鼻腔炎を生じやすいなど、ほかの病気と関連することもあります。
検査・診断
耳鼻咽喉科の専門医が鼻のなかを診察すれば、すぐに診断できる病気です。
鼻中隔の彎曲は、鼻鏡(鼻孔を広げる器具)や内視鏡を使って鼻中隔を直接観察することで診断ができます。そのほか鼻中隔全体の形を確認するためのCT検査や、鼻閉の程度を評価するための鼻腔通気度検査などがあります。
治療
鼻中隔がいくらかゆがんでいても、それは多数の人にみられる状態であり、症状がなければ治療の必要はありません。鼻閉や息苦しさなどの症状で、日常生活に支障をきたすようになると治療が必要となります。
治療は、鼻閉の症状の改善のために抗アレルギー薬や抗ロイコトリエン薬、点鼻ステロイド薬などが用いられます。薬による治療では鼻中隔彎曲症そのものを治すわけではなく、鼻閉の症状の改善が目的となります。
鼻閉の症状がひどく、薬による治療でも改善がみられない場合は、手術(鼻中隔矯正術)も検討されます。鼻中隔粘膜下にある曲がった部位の軟骨を取り除きます。表面の粘膜は残るので、穴が開くことはなく鼻の外観上の変化はみられません。
セルフケア
予防
鼻中隔彎曲症の症状のひとつに鼻閉があります。この症状の改善のために鼻用血管収縮薬が市販されています。鼻用血管収縮薬には速効性がありますが、作用時間は短いため、連続使用してしまうことで効果の持続時間がだんだんと短くなっていきます。さらに鼻の粘膜が腫れて、反対に鼻閉をひき起こすこともあります(薬剤性鼻炎)。鼻用血管収縮薬は、鼻閉を一時的に解消する薬であることを理解したうえで使用しましょう。症状がある場合は、耳鼻咽喉科の受診が必要です。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原大次
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