嗅覚障害
きゅうかくしょうがい

最終編集日:2022/4/14

概要

嗅覚はにおいを感じる感覚のことで、においは、鼻の奥にある嗅粘膜が空気中のにおい分子を取り込んで嗅覚受容体を刺激して感知されます。かぜや慢性副鼻腔炎などで鼻に炎症が起こることで、こうしたにおいをかぐ感覚に異常をきたすことを嗅覚障害といいます。

嗅神経の異常が原因になる場合と、鼻の閉塞が原因となる場合がありますが、実際はこの2つが混在していることが多くみられます。


原因

かぜや慢性副鼻腔炎などによる鼻の炎症によって、においの伝達神経(嗅神経)に障害が生じて発症するのが、嗅神経性の嗅覚障害です。

嗅神経の異常は、頭部や顔面の外傷で嗅神経が断裂したり、ウイルス感染によってにおいを感知する細胞(嗅細胞)が破壊されたりすることで起こります。

また、鼻の閉塞によりにおいを感じなくなるのが、閉塞性の嗅覚障害です。アレルギー性鼻炎などによる鼻づまりや、副鼻腔炎に伴うポリープ(鼻茸)がにおい分子の通り道をふさぐことが原因となって起こります。

まれに脳出血、脳梗塞、脳腫瘍のほか、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの、脳神経に異変をもたらす病気が原因で起こる嗅覚障害があります。アルツハイマー型認知症の初期には、嗅覚障害が現れることが知られています。


症状

においの感覚が弱くなったり、わからなくなったと感じます。また、本来と異なるにおいに感じたりすることもあります。

検査・診断

発症時期や症状の経過、味覚障害の有無のほか、かぜや副鼻腔炎、傷の有無、喫煙歴、これまでの病歴、使っている薬などを問診で確認します。とくににおいがわからなくなった時期は、治療に大きな影響があるため、発症時期の確認はとても重要です。

そして鼻のなかを鼻腔ファイバースコープで観察します。症状に応じて、においの感覚を調べる静脈性嗅覚検査や、副鼻腔炎や腫瘍などの状態を調べるCT検査などの画像検査を行うこともあります。


治療

嗅神経の異常が原因になる場合、薬(ステロイド剤の点鼻薬や飲み薬、ビタミン製剤、漢方薬など)による治療が行われます。

また、嗅覚障害が、脳挫傷、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞などの脳障害や、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性障害が原因で起こっている場合は、原因となっている疾患の治療を行います。


セルフケア

予防

嗅覚障害は、治療までに時間が経過しすぎてしまうと回復しないケースが多くあります。とくに嗅神経の異常が原因の嗅覚障害は、治療までの時間が大切です。放置すると、においの感覚が回復しない可能性が高まります。においに異変を感じたら、1週間以内に耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

監修

耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長

大河原大次

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