好酸球性副鼻腔炎こうさんきゅうせいふくびくうえん
最終編集日:2025/2/13
概要
鼻(鼻腔)の周囲には、副鼻腔と呼ばれる空洞が、左に4つ、右に4つ、左右対称に存在しています。副鼻腔は鼻腔に侵入してきた細菌やほこりなどを粘液(鼻水)で排出する、吸い込んだ外気を加湿・加温する、声を共鳴させるなどの働きをもっています。
この副鼻腔に数カ月にわたって炎症が続くのが好酸球性副鼻腔炎で、慢性副鼻腔炎の一つに分類されています。鼻粘膜に好酸球という白血球の一種が過剰に集まることから、この病名がついています。
鼻茸(はなたけ:鼻粘膜が腫れてポリープになったもの)ができることや、嗅覚異常が現れること、再発しやすいこと、ほかの慢性副鼻腔炎にくらべて治りにくいこと、気管支喘息や好酸球性中耳炎などを合併しやすいことなどが特徴です。
好酸球性副鼻腔炎の推定患者数は約2万人で患者の平均年齢は50~55歳、男性より女性に多いとされています。
好酸球性副鼻腔炎は厚生労働省の指定難病となっています。
原因
原因は明らかになっていません。
気管支喘息、アスピリン不耐症(アスピリンや非ステロイド性消炎鎮痛薬〔NSAIDs〕に対して過剰に反応する)がある人に好発することから、これらの疾患と共通の発症要因があるのではないかと考えられています。
以前は急性副鼻腔炎(ウイルスや細菌の感染から炎症が起こる)の治療が不十分だったり、放置していたりすることで慢性化し、好酸球性副鼻腔炎に移行すると考えられていましたが、現在では否定されつつあります。
症状
においがわからない嗅覚障害、粘稠度(ねんちゅうど:液体のねばり)の高い鼻水、鼻閉(鼻づまり)が現れます。後鼻漏(鼻水がのどのほうに流れる)、頭重感、目頭から頬にかけての重苦しさ・痛みなどを伴うこともあります。
好酸球性中耳炎を合併していると、耳だれ、耳が詰まった感じ、難聴などが、気管支喘息を合併しているとせき、たん、喘鳴(呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューと音がする)、呼吸困難などがみられます。
好酸球性副鼻腔炎に特徴的な嗅覚障害、粘稠度の高い鼻水を認めたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
検査・診断
鼻内視鏡(鼻咽腔ファイバースコープ)を用いて、鼻腔の粘膜の状態や鼻茸の有無を確認します。さらにCTで副鼻腔全体の状態を精査します。
そのほか、血液検査、嗅覚検査、鼻茸の組織を採取して行う組織検査、アレルギー検査なども行われます。
鼻腔内に発生する腫瘍などとの鑑別が必要です。
治療
重症度や再発リスク、気管支喘息などの合併症の有無などを考慮して、ステロイドの鼻噴霧薬、抗菌薬(細菌感染が疑われる場合)、抗アレルギー薬、ステロイドの内服などの薬物療法が行われます。
症状が改善されない場合は、手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術)で鼻茸を切除し、換気がよくなるようにします。
術後も再発をくり返す、薬物療法で効果が見込めないなどの重症例には、抗IL-4受容体抗体(生物学的製剤の一つ)という薬の使用が検討されます。
また、合併症と好酸球性副鼻腔炎はそれぞれの病状に相互に影響し合うことがわかっていることから、合併症の治療やコントロールも並行します。
セルフケア
療養中
好酸球性副鼻腔炎の根治はむずかしく、再発率は手術後6年間で約50%とされています。
手術までに至らず、薬物療法で良い状態が保てている場合でも、定期的に診察を受け、症状に変化がみられた場合は速やかに受診することが肝要です。
日常生活では、病状を増悪させる呼吸器感染症(かぜやインフルエンザなど)の予防に努め、過労、睡眠不足、過多なストレスを避けて規則正しい生活を送りましょう。気管支喘息などの合併症のコントロールも重要です。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原 大次
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