乳腺線維腺腫にゅうせんせんいせんしゅ
最終編集日:2022/4/20
概要
乳腺線維腺腫は乳腺の腫瘍(しこり)でもっとも頻度の高い、良性の疾患です。10~20代に好発し、30代にかけてしこりが増大するケースが約30%にみられるとされています。多くは妊娠時に増大し、40代になると変化がみられなくなり縮小します。閉経後は自然に消えていくものもあります。3cm以内のものが多いものの、なかには鶏卵大のものや急速に増大するもの、両方の乳房に多発するものなどがあり、乳がんや葉状腫瘍など悪性疾患との鑑別が重要となります。
原因
なぜしこりができるのか、原因はまだ明らかになっていません。性成熟期に増大すること、閉経後に消退傾向にあることから、女性ホルモンの関与が考えられています。
症状
乳腺線維腺腫のしこりには、次のような特徴があります。
・周囲との境目がはっきり感じられる
・触るとよく動く、押すと逃げる
・弾力があり消しゴムのような硬さ
・表面はつるっとした感じがする
・押しても痛くない
・3cm以内のものが多い
・片方、あるいは両方の乳房に多発することもある
検査・診断
問診、視診、触診と画像検査が行われます。多くの場合、超音波検査とマンモグラフィで診断がつきますが、乳がんや葉状腫瘍の疑いがある場合には、MRI検査、超音波ガイド下の針生検(組織の一部をとって病理学的に検査する)、切除生検を行い、鑑別をします。
とくに乳がんの家族歴がある場合には乳がんのハイリスク因子と考えられるため、鑑別がさらに重要になります。
また、乳腺症型というタイプの乳腺線維腺腫では、がんが併存するケースもみられるため、注意が必要です。
治療
基本的に経過観察を行います。変化がなければ、3カ月、半年、1年、2年間隔と、徐々に頻度を減らしながらしこりの様子をみていきます。
一見してわかるほどしこりが大きく、美容上の悩みとなる場合や、急にしこりが増大してきた場合は、手術での切除も考慮されます。また、一部に悪性のものがある葉状腫瘍との区別がつきにくいケースもあり、その場合も切除を考慮します。多くは皮膚を小さく切開してしこりの部分だけを取り除く、低侵襲な手術です。
セルフケア
予防
乳房のしこりに気づいて受診した若年層の約80%は、乳腺線維腺腫と診断されるといいます。よくある病気といえますが、なかには乳がんなどの悪性腫瘍であるケースもあります。しこりに乳腺線維腺腫を示す特徴があっても自身で判断することは避けて、乳腺外科専門医の確定診断を受けるようにしましょう。
そして、月に1回の乳房のセルフチェック、1~2年に1回の乳がん検診を欠かさず、違和感があれば早めに専門医を受診することをおすすめします。
監修
Raffles Medical Clinic Hanoi 婦人科
秋野なな
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