大動脈弁膜症

だいどうみゃくべんまくしょう

最終編集日:2022/10/31

概要

心臓弁膜症の一種で大動脈弁が何らかの原因でうまく機能しなくなる病気です。大動脈弁膜症は、大動脈弁が十分に開かなくなる大動脈弁狭窄症と、大動脈弁の閉まりが悪くなり、血液の逆流が生じる大動脈弁閉鎖不全症があります。

大動脈弁狭窄症は、左心室から大動脈に血液を十分に押し出せず、左心室に大きな負荷がかかることで心筋が肥大します。

大動脈弁閉鎖不全症は、左心室から大動脈に押し出された血液が左心室に逆流することで左心室が拡張します。

原因

大動脈弁膜症の原因はさまざまです。生まれたときから弁の形状や開閉に異常がある先天性のものもあれば、加齢や高血圧などによる動脈硬化、リウマチ熱の後遺症、感染症や心疾患などが原因となって発症する場合もあります。

大動脈弁狭窄症については、加齢による動脈硬化に伴って大動脈弁が硬化し、発症することが多いとされています。

大動脈弁閉鎖不全症は、先天性のもの、大動脈瘤(大動脈がこぶのようにふくらんだ状態)や大動脈解離(大動脈が裂けた状態)といった大動脈の疾患などが、おもな原因と考えられています。

症状

大動脈弁狭窄症の場合は、左心室から大動脈に血液を十分に押し出せなくなり、左心室の内圧が上昇する一方、左心室の心筋が肥大して、何とか血液を送り出そうとする機能(代償機転)が働きます。

そのため、初期の頃は長期間無症状のまま推移しますが、代償機転が働かなくなったとたんに自覚症状が出てくるため、成人の場合、50~60歳代になってから突然、自覚症状が現れることが多いといわれています。

大動脈弁狭窄症の症状として、運動時や階段を昇ったときなどに現れる胸痛発作(狭心痛)、失神、からだを動かしたときの息切れや夜間の発作的な呼吸困難といった左心不全などがあげられます。そのような症状が現れた場合には、早急に治療が必要です。


大動脈弁閉鎖不全症の場合は、大動脈から逆流してきた血液によって左心室が徐々に拡張していきます。大動脈弁狭窄症と同様、初期の頃は無症状で推移しますが、左心室の機能が低下したり虚血が生じたりすると、からだを動かしたときの息切れや呼吸困難、夜間の発作的な呼吸困難といった、左心不全の症状や狭心痛が起きるようになります。急性の場合は、急激に息切れや呼吸困難といった心不全の症状が現れます。

検査・診断

大動脈弁狭窄症および大動脈弁閉鎖不全症の検査・診断にあたっては、聴診(心音図)、心電図検査、胸部X線検査、心超音波検査などが行われ、必要に応じて心臓カテーテル検査、左心室造影検査、大動脈造影検査などが行われる場合もあります。

治療

大動脈弁狭窄症は大動脈と左心室の圧較差(あつこうさ)を計測し、20~50mmHg程度であれば軽症~中等症、50mmHg以上であれば重症で、弁の治療を考えます。

大動脈弁閉鎖不全症は中等症以下の場合や重症であっても無症状で心機能が正常な場合には、薬物による治療と定期的な心超音波検査による経過観察が行われ、激しい運動や労働を避ける指導があります。また感染性心内膜炎の予防にも注意します。


薬物による治療には、心臓の収縮力を強くする強心剤や、心臓の負担を減らして心不全の症状を改善させる利尿剤などが使用されます。ただし薬物による治療はあくまでも症状を抑えるための治療法であり、悪くなってしまった弁を治すことはできません。


重症で自覚症状があり心機能の低下がみられる場合は、薬物による治療に加えて、手術が行われます。手術には、胸部を切開し悪くなった弁を切除して人工弁(炭素繊維やチタンなどでつくられた機械弁または牛の心膜や豚の心臓弁でつくられた生体弁)に入れ替える弁置換術、患者さん自身の心膜から大動脈弁を作成して弁の周囲に縫い付ける大動脈弁再建術、高齢者ではカテーテル(医療用の細い管)を血管内に挿入して大動脈弁部に人工弁を留置するカテーテル大動脈弁置換術(TAVI)があります。弁置換術が現時点での標準的な治療法とされています。

セルフケア

予防

大動脈弁膜症などの心臓弁膜症は、からだを動かしたときや夜間の安静時などに、息切れ、胸の痛み、ドキドキする、気を失うなどの症状が現れますが、ふだんあまりからだを動かさない人は運動不足や年齢のせいだと勘違いすることも多く、病気の発見が遅れるおそれがあります。

また、じっとしていると、からだを動かしていればわかるはずの症状に気づくことができない場合もあります。

適度な運動をする、外出の頻度を増やす、家のなかでも家事などで動く機会を増やすなど、生活の質を改善していくことが大切です。

上記のような症状を感じた場合には、早めに専門医に相談することが重要です。

監修

小田原循環器病院 循環器内科 院長

杉薫

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