動脈硬化症どうみゃくこうかしょう
最終編集日:2023/5/19
概要
心臓から送り出される動脈血を全身の細胞に送り届ける動脈が、硬くなり弾力性を失う、あるいは内腔が狭くなった病態を指します。動脈硬化症はおもに次の3つに分けられます。
●アテローム動脈硬化(粥状動脈硬化)……動脈内側の血管内膜にLDLコレステロールが付着・蓄積したプラーク(粥腫)ができ、内腔が狭くなる
●中膜硬化……血管内の中膜という部分にカルシウムが沈着して石灰化し、血管が硬くなる
●細動脈硬化……脳や腎臓の細い動脈に硬化が起こる
動脈硬化症自体が死亡原因になることはまれですが、日本人の約20%が、動脈硬化症が原因のひとつとなる疾患(心疾患、脳血管障害など)で死亡しています。
加齢とともに動脈は硬く・狭くなることがわかっており、ある程度は生理的なもので、健康な場合でも10代後半から始まっているといわれます。ほかの疾患の原因として注意が必要になるのは、おおよそ40代以降と考えてよいでしょう。
原因
動脈を硬く・狭くする危険因子として、加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症、中性脂肪高値を含む)、肥満などが挙げられます。
症状
動脈硬化症では自覚症状は現れません。
動脈硬化症が進行して閉塞性動脈硬化症という病気を発症すると、狭窄(きょうさく)や閉塞を起こした動脈の場所によって、さまざまな症状が現れます。
●脳動脈……頭痛、意識喪失、からだの麻痺、失語など
●心臓の冠動脈……胸痛、肩やうでの痛みなど
●下肢の動脈……足の冷感、痛み、しびれ、間欠性跛行(かんけつせいはこう)など
検査・診断
最初に行われるのが、頸動脈エコー検査、CAVI・ABI検査、眼底検査です。頸動脈エコーでは動脈内のプラークの状態、血管の狭窄などを画像で確認することができます。CAVI・ABI検査は「血管年齢検査」と呼ばれることもあります。両うで・両足首に計測器をあてて測定し、CAVI検査は心臓から足首までの動脈の硬さを測定します。ABI検査はうでと足首の血圧比を調べるもので、足首の血圧がうでよりも低ければ、下肢の末梢動脈の血流が悪いと診断されます。眼底検査は網膜の動脈を直接見ることができる検査です。
これらの検査で動脈硬化症がある程度進んでいることがわかった場合は、くわしい検査として、CT検査やMRI検査が行われます。
血管の石灰化やプラークの状態、狭窄をさらに精査するために、冠動脈造影検査、血管内超音波検査、光干渉断層法検査(OCT検査)などが行われることもあります。
治療
動脈硬化症自体を治す治療法は現時点ではありません。動脈硬化を促進させる生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、肥満、高尿酸血症など)がある場合、それらを改善するための薬物療法が行われます。
並行して、生活習慣の見直し、リスク要因の改善を行います。
セルフケア
療養中
●肥満の改善・予防……とくに内臓脂肪型肥満は動脈硬化を促進させます。適正な摂取エネルギーを知って、食べすぎにならないようにしましょう。甘いものを控える、ご飯を食べすぎないことがポイントです。
●LDLコレステロールを増やさない……飽和脂肪酸の多い肉の脂身や食用油、コレステロールを含む魚卵類、レバーなどの内臓を控えます。大豆製品、野菜類、海藻類、きのこ類などの食物繊維、青魚を積極的にとることなどを心がけます。
●禁煙する……喫煙は動脈硬化を促進させることがわかっています。禁煙しましょう。
●運動を習慣化する……運動は肥満や高血圧、糖尿病など、いろいろな生活習慣病の改善効果があります。1回30~60分の有酸素運動を、週に3回程度は行いましょう。
●睡眠・休養でストレスを上手に解消……十分な睡眠と休養、気分転換してストレスをためないことは、生活習慣病の改善・予防につながります。
監修
小田原循環器病院 循環器内科院長
杉薫
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