肺動脈狭窄
はいどうみゃくきょうさく

最終編集日:2022/3/17

概要

肺動脈狭窄は、右心室から肺へ向かう肺動脈のどこかが、先天的な異常などの理由で狭窄している(きょうさく:狭くなっている)状態です。血液の流れが滞ってしまうため、送り出す右心室に負担がかかります。ほとんどの場合が生まれつきの先天性心疾患で、逆流防止の肺動脈弁が狭窄している場合と弁の上部が狭窄している場合、弁下組織が狭窄している場合があります。先天性心疾患のなかの8~10%を占めるといわれています。

原因

先天的な異常により肺動脈の一部が狭くなっている疾患です。難病であるヌーナン症候群、ウィリアムズ症候群、アラジール症候群などに合併して発症することもあります。

症状

狭窄の程度が軽度の場合には明らかな症状がなく、検診や医療機関を受診した際に心雑音で発見されることが多いようです。

狭窄の程度が中等度以上の場合には、徐々に蓄積される右心室への負担により、右心不全の症状が現れるようになります。例えば子どもの場合、年少の頃は無症状でも年長になるにつれて動悸や運動時の息切れ、さらに、全身のむくみ、胸水、腹水や呼吸困難などの症状が現れてきます。

狭窄の程度が強い場合には、新生児期に低酸素血症を反映したチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色である状態)が認められ、多呼吸、ミルクの飲みが悪い、体重増加が少ないといった心不全の症状が現れます。その場合は、できるだけ早く治療を受ける必要があります。軽度の場合は治療の必要はなく、普通の生活ができる人が多くみられます。


検査・診断

胸部X線検査(レントゲン)、心臓超音波検査、心電図検査、心臓カテーテル検査などにより、診断および重症度の判断が行われ治療方針が決められます。

治療

治療の必要性や方法は、狭窄の位置や重症度などによって変わります。

狭窄の程度が軽度であれば治療をせずに経過をみることが多く、中等度の場合には、年少時など無症状のうちに治療を行うことが多いといわれています。

狭窄の程度が強く心不全の症状が認められる場合には、内科的な治療と並行した治療となり、狭窄部が肺動脈弁の場合にはまずカテーテル治療が選択されます。肺動脈弁以外の狭窄の場合は、状況に応じてカテーテル治療、または外科手術が選択されます。治療により改善した場合でも運動制限が必要となることがあります。ただし、概ね経過は良好で日常生活には支障はありません。

なお、肺動脈狭窄はウィリアムズ症候群やヌーナン症候群などの基礎疾患の一症状として出現していることもあり、その場合は包括的な視点からの治療が重要となります。


セルフケア

予防

多くの場合、明らかな症状がないまま検診や医療機関を受診したときに心雑音で発見されます。指摘を受けた場合は専門医の受診が必要です。

監修

神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長

福井和樹

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