新しく承認されたアルツハイマーの治療薬とは
最終編集日:2024/12/9
超高齢社会の日本において、認知症患者は増加の一途を辿っています。2030年には、高齢者の7人に1人が認知症患者になると推定されています(2024年厚生労働省研究班調べ)。
認知症となる原因で最も多いのがアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)ですが、その治療薬として抗アミロイド抗体薬が注目されています。
●認知症の中で最も多いアルツハイマー病
認知症とは、さまざまな原因によって脳の神経細胞が障害されることで、記憶、判断力などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障を来した状態をいいます。原因となる病気によっていくつか種類がありますが、最も多いのはアルツハイマー病です。
アルツハイマー病の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することで、脳の神経細胞が破壊されることが原因の一つとして考えられています。アルツハイマー病の初期症状として多く見られるのは物忘れです。何を食べたかを忘れても、しばらくすると思い出す加齢による物忘れと違い、アルツハイマー病では食べたこと自体を忘れます。過去のことは覚えていても、最近の出来事は忘れてしまい、新しいことを覚えられないのが特徴です。症状の進行はゆるやかですが、進行すると今の日時や季節、場所などがわからなくなったり、判断力が低下したり、物を盗まれたといった、物盗られ妄想などの症状が現れたりします。
●アルツハイマーの治療薬「ドナネマブ」とは
残念ながら認知症を完治させることはまだできません。そのため、現在の認知症の治療の目的は、できるだけ進行を遅らせることです。アルツハイマー病においては、原因物質の一つとして考えられているアミロイドβに働きかける新薬の開発が進んでいます。抗アミロイド抗体薬として、2023年の「レカネマブ」(商品名:レケンビ)に続き、2024年9月には「ドナネマブ」(商品名:ケサンラ点滴静注液)が厚生労働省から承認されました。抗アミロイド抗体薬は、脳内に蓄積するアミロイドβというたんぱく質に作用することで、神経細胞の破壊を防ぎ、認知機能の低下を遅らせる効果が期待されています。
先に承認されたレカネマブとドナネマブの違いは、結合するアミロイドβの凝集体(集まったかたまり)の種類の違いにあります。レカネマブは、主にアミロイドβが凝集してアミロイドβプラークになる過程のプロトフィリルに作用するのに対して、ドナネマブはアミロイドβプラークに作用します。
ドナネマブの対象となるのは、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症の人です。投与は4週に1回、点滴静注(約30分)が行われます。なお、投与期間は原則1年半です。
ドナネマブは臨床試験で、進行を22.3%遅らせる効果があると認めています。主な副作用は、脳の微小出血や脳浮腫、注射に関連するものなどがあります。
ドナネマブの薬剤費は、2024年11月時点で約308万円となっており、保険適用ではあるものの、月額数万円はかかると考えられます(高額になった場合、条件に応じて高額療養費制度が適用される)。抗アミロイド抗体薬は新薬のため、「長期的な効果と安全性は問題ないか」「費用に見合った治療薬なのか」など、専門家の中でもさまざまな議論が行われています。
監修
相生山ほのぼのメモリークリニック 院長 日本認知症学会 専門医・指導医/日本老年精神医学会 専門医・指導医
松永慎史
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