手の脱力

最終編集日:2024/1/19

概要

何かを持ったときに力が入らない、食事の際に茶碗や箸を落としてしまうなどの症状が出ることがあります。人は脳からの命令によって、何かをつかんだり持ったりしていますが、この脳から末梢神経に至る伝達経路に何らかの異常が生じると、手の脱力感や力が入らないという症状が現れます。

朝起きたら手に力が入らない、ろれつが回らない、しびれがあるなどは、脳梗塞のときによくみられる症状です。通常、左右どちらかの手に異常がみられます。

いったん発現したこれらの症状が、数分から数時間ですっかり回復してしまうことがあります。しかし、これは一時的に脳血流が途絶えて発症し、その後、血流の再開によって症状が回復したために起こります。この症状は、一過性脳虚血発作と呼ばれ、脳梗塞の前ぶれとなることが多く、とても重要です。

症状が回復しても安心できず、なるべく早く受診する必要があります。脳梗塞の場合は、急性期に効果的な治療をするのに時間的制約があり、一刻も早く受診することが大事です。

なお、手足の脱力やしびれ、ろれつ障害など同様の症状は脳出血の場合にも現れます。


脳梗塞や脳出血は、急激に症状が現れますが、脳の障害でも手の脱力感がゆっくり現れることがあります。慢性硬膜下血腫がこれにあたり、数週間から数カ月前に頭に外傷を受けたケースなどでみられます。手の脱力感とともに、めまいや頭痛などの症状が現れます。

脊髄や脊髄から出た末梢神経が圧迫されたり、炎症や変性などの障害が起こって症状が出ることもあります。

変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症などの場合は、神経が圧迫され、手足の脱力やしびれ、痛みが生じます。

ほかには、脳や脊髄の運動に関係する神経に変性障害が生じることで、筋肉に指令が伝わらなくなって筋力が低下し、筋肉がやせていく筋萎縮性側索硬化症によって生じることがあります。

また、骨格筋の筋肉が徐々に弱くなっていく、筋ジストロフィーの場合があります。さらに、筋肉を動かす神経から筋肉へ刺激を伝達する部分に障害が生じ、筋力低下や疲れやすさが生じる筋無力症による場合もあります。

受診の目安

救急車を呼ぶ・ただちに医療機関を受診

・手の脱力感とともにしびれに頭痛や嘔吐がある

・ろれつが回らない

・意識障害が出ている

・大きないびきをかいている

医療機関を受診

・手の脱力感がつづいている

・腰痛やしびれもある

・数週間から数カ月前に頭に外傷を受けた

様子をみる

・たまに手の脱力感を感じるが、生活に支障はない

セルフケア

手の脱力感、しびれ、ろれつが回らないなどの症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診することが必要です。

考えられる病気

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本司

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