脳出血
のうしゅっけつ

最終編集日:2022/4/1

概要

脳の細い動脈が破れて脳内に直接出血することを脳出血といいます。

出血部位としては大脳がもっとも多く、小脳、脳幹などでもみられます。血管から噴出した血液が固まって血腫となり、周辺の神経や脳組織を破壊し、圧迫するため、頭痛や嘔吐、麻痺や意識障害などの症状が突然現れます。また、時間とともに進行し、脳がむくむこと(脳浮腫)により、脳が破壊されていきます。

この脳出血をひきおこす元になっているのは高血圧です。以前は命にかかわるような脳出血が多くありましたが、近年では血圧管理法の充実やコントロールへの意識向上、降圧剤の進歩などによって、脳出血による死亡率は減少傾向にあります。

原因

脳出血のおもな原因は高血圧です。高血圧の状態が長くつづくと、脳内の血管がもろくなる動脈硬化を発症します。これが進行して血管が破れ、出血に至ります。

高血圧以外の原因として、高齢者では脳の血管にアミロイドというたんぱく質が沈着することで血管がもろくなるアミロイドアンギオパチー、若い世代では生まれつき血管の形態に異常のある脳動静脈奇形や、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)などが挙げられます。また、頭部への強い打撃など、外傷性のけがなどから脳出血が起きることもあります。

症状

突然発症することが脳出血の特徴です。出血した部位や出血量、血腫の大きさなどによってさまざまな症状が現れます。頭痛や嘔吐、血圧上昇、半身の運動麻痺や感覚障害、麻痺による顔のゆがみ、しゃべりにくい、言葉が出にくいといった症状から、出血量が増えるにつれ意識障害、昏睡状態、死に至るケースまで、症状も重症度も多岐にわたります。

回復しても半身麻痺や言語障害などの後遺症が残ることが多く、その後のQOL(生活の質)を大きく損なうことになります。

(左)正常な脳と(右)脳出血
(左)正常な脳と(右)脳出血

検査・診断

脳出血は救急搬送されることが多く、速やかな対応が求められます。脈拍、呼吸、体温、血圧の4つを基本としたバイタルサインの測定や医師による神経学的所見とともに、確定診断には頭部のCT検査が有効とされています。必要に応じて血管造影検査や、MRI検査やMRA検査といった画像診断なども行います。

治療

治療法は発症の原因や出血部位、出血量などで異なります。

高血圧が原因の場合は、経口薬や点滴などによる血圧のコントロールに加え、出血部位周辺の脳のむくみを抑える治療や、半身麻痺などの後遺症に対応したリハビリテーションなどを行います。

血腫が大きい場合や深刻な症状がみられる場合は、血腫を取り除く手術(開頭血腫除去術や血腫吸引術)など外科的な治療が検討されます。

セルフケア

病後

治療後、半身麻痺や言語障害などの後遺症がみられる場合は、症状に応じたリハビリテーションが行われます。

再発防止に重要なのは血圧の管理です。薬を服用するだけでなく、生活習慣の改善に取り組み血圧を常にチェックしておくことが大切です。

予防

高血圧にならないようにすることが脳出血の予防につながります。食生活では塩分を控え、適度な運動を行って過度なストレスを避け、血圧が常に正常値内に収まるようにしておきましょう。高血圧症状があれば医師の診察を受け、指示に従って薬の服用をつづけることが大切です。なお、便秘時の力みや、冬期の入浴時の温度変化などでは血圧変動が起こりやすいので注意が必要です。

監修

昭和大学医学部 脳神経外科 名誉教授

藤本司

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