高次脳機能障害
こうじのうきのうしょうがい

最終編集日:2024/6/3

概要

脳の病気や外傷によって脳がダメージを受け、急性期の症状が落ち着いた後に、思考力や記憶力、判断力、集中力、社会性などの低下が起こる状態を指します。患者さんのQOL(生活の質)は著しく低下し、また、症状によっては周囲に病的な状態と理解されないこともあり、深刻な状況になるケースも少なくありません。


「高次脳機能障害診断基準ガイドライン」では、おおよそ以下の4つを満たすものを高次脳機能障害と診断するとしています。

①原因となる脳の病気や外傷があった、②記憶障害、注意障害、遂行機能(目標に向かって計画的に行動していく)障害、社会的行動障害などの認知障害が主たる原因で、生活が制約されている、③MRI、CT、脳波などの検査、あるいは診断書によって脳の器質的病変(脳に何らかの異常がある)が確認されている、④ほかの病気が否定できる。

原因

交通事故や転落などによる脳の外傷、脳梗塞脳出血などの脳血管障害、脳炎、低酸素脳症、脳腫瘍など、脳にダメージを与える可能性のある病気や外傷が原因となります。

アルツハイマー病パーキンソン病なども原因疾患になりますが、進行性の病気の経過のなかで一症状として現れた場合は、高次脳機能障害として診断されないことが一般的です。

症状

脳のどの部分が障害されたかによって異なりますが、おもに以下のような症状が現れます。


●注意障害

物事に集中できない/そわそわと落ち着かない/カギのかけ忘れなど、ちょっとしたことを忘れてしまう/複数のことを同時にできないなど

●記憶障害

新しい出来事を覚えられない/数時間前のことも忘れてしまう/何度も同じことを言う/言われたことを忘れてしまうなど

●遂行機能障害

家事や仕事を計画的にこなせない、段取りが悪くなる/優先順位をつけて物事を進められない/指示がないと行動できないなど

●情緒障害

怒りっぽい/無気力/こだわりが強い/我慢できないなど

●言語・コミュニケーション障害

失語症(思った言葉が出てこない、うまく話せない、言い間違いをする、読み書きができない、簡単な計算ができないなど)/会話にまとまりがない/話がすぐ脱線する/言外の意味を推測・理解できない、ニュアンスが伝わらない/共感できないなど

●失認

そのものが何かわからない/人の顔が見分けられない/何の音かわからないなど

●失行

慣れているはずの道具の使い方がわからない/慣れているはずの行動が順序立ててできない(着替え、料理など)など

●半側空間無視

右(左)にあるものを見落とす(片側の食事に手をつけないなど)、気づかない/右(左)にあるものにぶつかって歩くなど

検査・診断

問診では、原因となる脳の病気や外傷の確認を行い、本人や家族など周囲の人が気づいている・感じている心身の異常(違和感)について詳しく聞き取ります。頭部MRI、CT、PET、脳波などの検査で、脳の損傷部位を精査します。

また、ミニメンタルステート検査(MMSE)、前頭葉機能検査(FAB)、ウェクスラー成人知能検査(WAIS-Ⅲ)、かなひろいテスト、長谷川式簡易知能評価スケール、レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)などの神経心理学検査を用いて、知能や記憶力、言語機能、遂行機能などの評価を行います。

診断は、原因疾患や外傷の急性期症状が落ち着いてから行われます。高次脳機能障害があっても、画像検査所見に異常がみられない場合もあり、診断を難しくしています。

治療

現時点では根治的な治療法は確立されていません。治療はリハビリテーションが中心になります。

発症、あるいは受傷からの時間、障害、重症度、治療の目標などを考慮して、医学的リハビリテーション(認知リハビリテーション、心理カウンセリング、神経胞の再生を促す薬を用いる薬物療法など)、生活訓練プログラム、職能訓練プログラムを組み合わせて行われます。ガイドラインでは、医学的リハビリテーションは最大6カ月、その後は生活訓練プログラム・職能訓練プログラムを加えた訓練を行い、全体で1年間の訓練が望ましいとしています。

セルフケア

病後

高次脳機能障害をもつ人は、障害者自立支援法に基づくサービスを受けることができます。また、各都道府県の高次脳機能障害支援普及事業による支援体制の整備も進んでいます。あわせて医師に相談するとよいでしょう。

予防

高次脳機能障害は、発症から1年程度までが、もっとも回復が見込める期間とされています。病気や外傷で脳にダメージを受けた後に、はっきりとした症状でなくても「何かおかしい」「どこか変だ」と感じる状況なら、脳神経外科や神経内科、精神科などの専門医の受診がすすめられます。

監修

赤坂溜池クリニック院長

降矢英成

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