神経調節性失神しんけいちょうせつせいしっしん
最終編集日:2023/3/29
概要
自律神経には交感神経(緊張時に働く)と副交感神経(リラックス時に働く)の2種類があり、2つの神経のバランスが崩れることで、血圧が低下したり、脈が遅くなったりして脳へ届く血流が低下し、これにより一時的に気を失ってしまう発作が、神経調節性失神です。
神経調節性失神は、特定の状況で発症する状況失神や、血管迷走神経反射による失神、および頸動脈洞症候群などを総称する概念とされています。幅広い年齢でみられますが、若年層に出現頻度が高くなっています。
原因
自律神経のバランスが崩れることで脳血流が減少して発症します。発生原因によって次のように分類されます。
●血管迷走神経性失神
長時間立ったままや座ったままなど同じ姿勢でいたり、痛みなどのストレス、不眠や肉体的疲労の蓄積、精神的恐怖などが原因になって起こります。
●状況失神
特定の動作(排尿、排便、飲み込み、せき、くしゃみなど)のときに起こります。
●頸動脈洞症候群
衣服の着替えや、運転、重たい荷物の上げ下げといった頸部の回旋や伸展、またネクタイなどをきつく締めたりすることによる頸部への圧迫が誘因となって起こります。
症状
神経調節性失神の症状は、一時的に意識を失い、仰向けになっていると数分後には自然に治まるのが特徴です。前駆症状(浮動感、吐き気、発汗、視力障害など)を伴うこともあれば、伴わないこともあります。混雑する電車などで立っていた人が急に失神するというケースは、神経調節性失神の典型的な症例です。
検査・診断
失神の診断は、脳の血流低下と意識消失の関連を証明することです。まずは問診で失神発作時の状況の把握を行います。その結果、神経調節性失神が疑われる場合は、ティルト試験(傾斜台試験)を行い、自律神経の調節異常の有無を確認します。この検査では、検査台の上に患者さんが横になり、検査台を動かして傾斜をつけながら心電図や動脈圧記録を観察し、自律神経の働きを調べます。
このほか、心電図や心臓超音波(心エコー)検査、血液検査、頭部CT検査、頭部MRI検査を行い、ほかの脳や心臓の疾患がないか確認することがあります。
治療
多くは、経過観察で様子をみます。また日常生活のなかで、飲酒や入浴時、排便後など発作が起こりやすい状況では、注意をして過ごすことも重要です。薬物治療が必要な場合は、α交感神経刺激薬(塩酸ミドドリン、エチレフリン塩酸塩、メチル硫酸アメジニウム)、β遮断薬、ジソピラミド、セロトニン再吸収阻害薬などが使われます。
セルフケア
予防
・気分が悪くなったり、動悸、発汗などの前兆を感じたら、すぐに横になりましょう。
・入浴後、長時間立っている、不眠、飲酒、塩分制限、脱水など、神経調節性失神の誘因となることは避けるようにしましょう。
・弾性ストッキングの着用も予防法のひとつです。
監修
小田原循環器病院 循環器内科 院長
杉薫
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