心室細動しんしつさいどう
最終編集日:2022/3/5
概要
心室細動は心室が300回/分以上細かく震える状態です。いわゆる「突然死」の直接の原因となる不整脈で、心室細動が起こると数秒で意識をなくしてしまいます。
心臓の4つの部屋のなかでも、全身に血液を送り出すのに重要な“左心室”が不規則かつ小刻みに震えるため、全身へ血液が送り出せなくなり意識消失やけいれんを起こします。すぐに救急車を呼び、人工マッサージをしながらAEDなどで除細動をすることが、救命のためには必要です。
似ている名前の疾病に「心房細動(しんぼうさいどう)」がありますが、まったく別の不整脈で、心房細動は直ちに命にかかわる不整脈ではありません。
原因
心室細動は、心筋梗塞を発症したときや心臓の機能が悪い慢性心不全状態の人、遺伝的な素因をもっている人に起きやすいとされています。
心筋梗塞では心臓に血液を供給する冠動脈が閉塞し、心臓に必要な栄養や酸素が十分に送られなくなります。そのため心臓が正常に働くことができず、心室細動を発症します。
慢性心不全などで心臓の状態が悪い人に負荷やストレスがかかったり、からだのミネラルバランスが保てない電解質異常などが加わったりして、生じることがあります。
また、遺伝的な心臓の異常も原因のひとつとして指摘されており、ブルガダ症候群(睡眠中や安静時に突然死することがある心臓病)という日本人に多い心臓の病気では、心室細動を起こしやすいといわれています。
症状
心室細動を起こすと、全身の臓器へ送り出す血液が止まるとともに、脳への血流も途絶えてしまい数秒で意識が失われます。そのため心室細動では、一刻を争う適切な救命措置が必要です。迅速な対応がなければ障害が残ったり、最悪の場合死に至ることもあります。
心室細動が起きている間は意識を失っているため、症状を自覚することはできません。失神する病気は心室細動以外にもありますが、倒れている人に接した際にその人の脈がふれなければ心室細動を疑い、一刻も早くAEDや心臓マッサージによる救命が必要です。
検査・診断
症状の問診や心電図検査などによって診断されます。
また、心室細動の原因となる病気をもっているかどうかなどの検査を行う場合もあります。
治療
心室細動は命にかかわる疾患で、治療までの時間が長いほど救命率が低下してしまうため、一刻も早くAEDを用いることや継続的な心臓マッサージが必要です。
心室細動に対するもっとも確実な治療法は植込み型除細動器(ICD)を留置することです。体内に植込むことで機械が心電図を常時モニターし、心室細動を起こした際はすみやかに電気ショックをかけて蘇生してくれます。発作を起こさないようにするものではありませんが、発作が起きてもICDの作動により心室細動が治まります。しかし、これが作動することはつらいばかりか心臓にもよくありません。さらに発作を起こさないようにするために薬などによる治療も必要です。
過去に失神したことがある人や、家族や親族に若くして突然死をした人がいる家系の人、心臓に何らかの病気をもっている人は早めに循環器内科で相談をしてみてください。
セルフケア
予防
心室細動は非常に危険な不整脈です。そのため心室細動が起こる可能性がある心疾患はしっかりと治療しておく必要があります。心室細動を起こすことがある病気のおもな例は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、心筋症、ブルガダ症候群などです。
これらを指摘されたことがある人は、自覚症状の有無にかかわらず定期的に診察を受けて心臓の状態を確認しておきましょう。病気の自覚がなくても、胸の違和感や不整脈などがくり返し起きている場合は専門医療機関の受診をおすすめします。
監修
神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長
福井和樹
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