ウエルシュ菌性食中毒
うえるしゅきんせいしょくちゅうどく

最終編集日:2023/3/28

概要

人や動物の腸管、土壌、水中など、自然界に広く分布している「ウエルシュ菌」が付着した食品を食べることでひき起される感染症です。熱に強い「芽胞(がほう)」を形成します。芽胞とは細菌が生き延びるためにつくる硬い殻のような構造のことです。ウエルシュ菌にはこの芽胞があるため、通常、加熱によって死滅する菌が多いなか、100℃で加熱した場合も菌が死滅しません。

原因

加熱の段階で多くの細菌は死滅しますが、熱に強いウエルシュ菌は生き残ります。そして、その食品を再加熱することでウエルシュ菌が増殖するのに好ましい環境となります。食品内で増殖したウエルシュ菌が食べ物とともに胃を通って小腸内で増殖して毒素が産生され、下痢などの症状が起こります。カレーやスープなど、食べる日の前日などに大量に加熱調理され、鍋のまま室温で置かれていた食品などに発生がみられます。また、肉じゃがやローストビーフなど、肉や野菜が含まれた加熱食品にもみられます。


家庭内での発生はさほど多くありませんが、旅館や学校、病院や施設など集団での給食施設で発生することが多く、給食病とも呼ばれます。

症状

通常6~18時間、平均10時間で腹痛や下痢を発症します。下痢の症状の多くは、水様性と軟便で嘔吐や発熱を起こすことはあまりありません。また、症状は比較的軽く、1~2日間で回復することがほとんどです。

検査・診断

患者さんの便を採取して細菌の有無を調べるとともに、原因と思われる食材や、発生施設の包丁やまな板なども調べます。菌を培養させた後に顕微鏡検査や遺伝子検査などを行い、ウエルシュ菌が確認できれば特定されます。

治療

治療薬はなく、対症療法です。下痢で頻繁にトイレに行く、血便や激しい嘔吐があるなど重い症状がみられる場合は、医療機関を受診してください。


食中毒の原因は直前の食事とは限らず、少し時間が経ってから症状が出ることもあります。下痢や嘔吐などがあるときは、脱水症状を起こさないように水分補給をしてください。たとえ下痢がつづいても、自分の判断で市販の解熱鎮痛薬や下痢止め薬などを服用するのは控えましょう。

セルフケア

予防

食品は加熱すれば安心という考え方がウエルシュ菌での食中毒の発生原因となっています。前日調理はせず、できるだけその日につくったものを食べましょう。つくりおきをする場合は、小分けにするなどで、できるだけ早く冷まして冷蔵庫か冷凍庫に保存します。保存したカレーやスープ、鍋物などを食べる際は、殺菌のため全体に熱が通るよう、よくかき混ぜながら加熱しましょう。ウエルシュ菌による食中毒の件数は少ないですが、集団発生することが多いといわれています。カレーやスープを大量に調理した場合、食品に熱が十分に通らないと菌が残存し、集団発生が生じます。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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