腸炎ビブリオ感染症
ちょうえんびぶりおかんせんしょう

最終編集日:2023/3/27

概要

腸炎ビブリオ菌に感染することで起こる食中毒です。とくに汚染された魚介類の摂取によって感染し、発症します。栄養や温度などの条件がそろえば、他の食中毒の倍以上の速さで増える細菌です。夏に発生することが多く、毎年7月から9月にかけて患者数が増加します。基礎疾患がある人や高齢者は重症化しやすいので、注意が必要です。

生魚を食べる日本や東南アジア地域に多い食中毒ですが、近年では米国でも増加しているといわれています。

原因

刺身や寿司など非加熱の魚介類がおもな発生源です。魚介類の内臓やエラなどに菌が付着していてこれらが刺身や寿司として摂取されることで感染します。また魚介類に付着している腸炎ビブリオ菌が、まな板や包丁を通じて他の食品に付着すると、その食品から食中毒を起こすこともあります。

腸炎ビブリオ菌は熱に弱いため加熱調理で死滅しますが、加熱が不十分な場合は感染することがあり、焼き魚で発生した例もあります。


症状

さし込むような激しい腹痛や、水様性や粘液性の下痢などの症状が現れます。下痢は多いときで1日に数十回に及ぶこともあり、しばしば発熱や嘔吐を伴います。

検査・診断

潜伏期間は8~24時間程度ですが、短い場合は2~3時間で発症することもあるので、問診で当日や前日に食べたものなどを確認します。夏場の食中毒の患者さんで、24時間以内に生の魚介類を食べていた場合は、腸炎ビブリオ感染症が強く疑われます。確定診断の際には他の菌と区別するため便を採取して検査が行われます。

治療

特別な治療薬はなく、対症療法が中心です。下痢がひどく医療機関を受診した場合は脱水を防ぐための点滴が行われることや、抗菌薬が使われることもあります。水のような便が正常に戻るまでは1週間程度かかります。

セルフケア

予防

手洗いは食中毒予防の基本です。外出後や調理前、食事前は必ず手を洗いましょう。時計や指輪などは外し、指先や爪の間まで念入りに洗うことが大切です。

腸炎ビブリオ菌は塩水を好み、真水に弱い性質があるので、調理前の魚介類は真水でよく洗うことが大切です。調理の際は野菜と魚介類で、まな板や包丁を分けて使うと安全ですが、難しい場合は野菜から先に調理し、その後、まな板や包丁をよく洗って熱湯消毒を行いましょう。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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