飛蚊症
ひぶんしょう

最終編集日:2022/4/7

概要

ものを見ているとき、黒い点や糸くずのような影が動いて見える状態で、眼球の器官である硝子体(しょうしたい)の濁りが網膜に映ることが原因です。

加齢に伴う生理現象として現れる飛蚊症の場合、とくに治療は行わず経過観察をします。

網膜剥離などの病気の前兆である可能性もあり、症状が現れた場合は眼科への受診が必須です。


原因

ものを見る際に、光は角膜、水晶体、硝子体を通過して網膜へと到達し、そこから視神経を経由して脳に視覚情報として伝達されます。

飛蚊症は、光の通過する経路である硝子体に何らかの理由でごみのようなものが存在し、それが網膜に映っている状態です。飛蚊症は、原因によって次のように分類されます。


●先天的な飛蚊症

妊娠中に胎児の眼球が形成される過程において、本来、眼球の完成に伴って消失するはずの血管の名残が硝子体に残存してしまことがあります。これが濁りとなり飛蚊症の症状がみられることがありますが、症状が進まない限り問題ありません。


●加齢によって生じる飛蚊症

・離水

眼球のなかは、硝子体というゼリー状の物質で満たされていますが、加齢に伴いさらさらした液体状の部分が増えてきます。これが離水で、さらに年齢を重ねると液体のたまった部分(液化腔)はどんどん大きくなり、硝子体全体が少しずつ収縮して硝子体に濁りが生じます。

・後部硝子体剥離

硝子体は網膜と軽く癒着していますが、硝子体の収縮に伴ってこの癒着が剥(は)がれ、剥がれた硝子体の影が網膜に映り込んで、小さな虫や糸くず、雲のような黒っぽい模様として見えます。

また、硝子体の全部が網膜からきれいに剥がれるわけではなく、所々で剥離が生じます。その際、まだ癒着している部分の網膜が引っ張られて、網膜に孔(あな)があくことがあり、これが網膜裂孔です。放置すると網膜剥離をひき起こします。


●加齢以外によって生じる飛蚊症

・硝子体出血

網膜の血管が破れ、出血が硝子体のなかにおよんだ状態です。出血が少量の場合、濁りとして飛蚊症のような症状となり、時間の経過とともに吸収されていきます。網膜血管の病気による出血の場合は通常多量で、出血によって光が遮られて網膜に到達しなくなるため、視力が急速に低下します。

後部硝子体剥離の場合、網膜血管が引っ張られることや、網膜剥離に起因することが出血の原因と考えられます。

・ぶどう膜炎

虹彩・毛様体・脈絡膜という組織を総称してぶどう膜といいます。このうち毛様体と脈絡膜が細菌感染などによって炎症を起こすと、炎症性物質や白血球が硝子体のなかに押し出され、硝子体の濁りとなります。

疲労やストレスなどで抵抗力が低下したときに起こりやすくなります。


症状

●生まれつきのもの、離水によって起こる飛蚊症

青い空や白い壁を見て飛蚊症に気づくことが多く、発症時期は不明瞭です。水玉、泡、水滴などのように輪郭がはっきりしておらず、白色もしくは不透明に見えます。

●後部硝子体剥離による飛蚊症

ごみ、糸くず、雲、蚊、ハエなどのようにはっきりとした物体が常に見えています。硝子体が網膜から剥がれるときに閃光が見えることがあります。

●硝子体の多量出血

目の前に墨がかかったように感じられます。

●ぶどう膜炎

霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)、羞明(まぶしい)、充血しているなどの症状があります。


検査・診断

有効な検査は、眼底検査です。検眼鏡を使用し、瞳孔から眼球の奥にある網膜の状態を調べ、後部硝子体剥離の有無、後部硝子体剥離によって生じる可能性のある網膜裂孔、その先の網膜剥離の有無をチェックします。

治療

●加齢によって生じる生理的な飛蚊症

視力低下や視野異常をひき起こすことはないため、とくに治療は必要とせず、経過観察します。

●網膜裂孔

裂孔の周囲にレーザーを照射し、網膜を焼きつけて孔をふさぐ、レーザー光凝固法という治療を行います。

●網膜剥離

はがれた網膜を元の位置に戻すため、網膜復位手術や硝子体手術などが行われます。

●硝子体出血

出血の程度に応じて硝子体および病的な組織を取り除く、硝子体手術を行います。

●ぶどう膜炎

ステロイド剤による治療が中心となり。症状が軽ければステロイド剤の点眼薬を使用し、場合によっては飲み薬による治療が行われます。


セルフケア

療養中

飛蚊症の場合、目に映る浮遊物が消失することはありません。過度に気にせず、慣れてくれば徐々に気にならなくなります。

予防

寝不足や目の使いすぎなどに注意しましょう。飛蚊症の疑いがある場合は、まず眼科を受診して検査を受け、放置しておいてよいものかどうかを診断してもらうことが大切です。

監修

井上眼科病院 院長

井上賢治

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