脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)
のうどうみゃくりゅう・みはれつのうどうみゃくりゅう

最終編集日:2024/6/25

概要

脳内の動脈の一部が病的にふくらんで風船のような瘤(こぶ)状になったものを指します。瘤が発生しやすい場所として、前交通動脈(約30%)、内頸動脈の後交通動脈分岐部(約25%)、中大脳動脈などが挙げられます。脳動脈瘤自体は一部の発生部位にある例外を除いて無症状ですが、破裂すると、くも膜下出血を起こします。そうなると約30%が死亡、あるいは寝たきりになり、約30%に後遺症が起こるとされ、破裂を未然に防ぐことが肝要になります。

未破裂脳動脈瘤の多くは3㎜以下で、健康な成人の4~5%にみられ、女性は男性の約2倍といわれています。

原因

脳動脈瘤の生じやすい場所は、いずれも構造的に脆弱性をもっている部位です。そこに加齢、高血圧、喫煙、過度の飲酒などのストレス要因が加わると、瘤が大きくなり、破裂のリスクが高くなります。また、家族に脳動脈瘤や、くも膜下出血の病歴のある人がいる場合や、脳動脈瘤を合併しやすい遺伝性の疾患である多発性嚢胞腎があると、脳動脈瘤の発生のリスクは高くなるとされています。

症状

一部の例外(内頸動脈の後交通動脈分岐部や前交通動脈の動脈瘤の一部など)を除いて症状はありません。脳ドックやほかの病気での脳のMRA(磁気共鳴血管撮影法)検査で偶然みつかることがほとんどです。

まれに、上記の部位の動脈瘤で、複視(物が二重に見える)、まぶたを開けられない、視力障害、視野障害などの神経症状が現れることがあります。

検査・診断

MRA検査で脳動脈瘤の存在が明らかになったら、脳血管造影検査(アンギオグラフィ)や3D-CTA(三次元CT脳血管造影法)で動脈瘤の場所、大きさ、形、周辺の血管の様子などをくわしく調べます。脳血管造影は太ももの付け根からカテーテルという細い管を入れて行う検査のため、入院して行う場合もあります。

治療

3㎜未満の形がいびつでない脳動脈瘤は、破裂の心配はほとんどなく、多くは経過観察を行います。半年から1年に1回、MRA検査などで動脈瘤に変化がないかを確認します。並行して禁煙、節酒、高血圧の治療を行います。日本脳卒中学会の「脳卒中治療ガイドライン」では、以下のような脳動脈瘤は治療適応となるとされています。


●大きさが5~7㎜以上。

●大きさが5㎜未満で、①神経症状がある、過去にくも膜下出血を起こしたことがある、②特定の部位にある(前交通動脈、内頸動脈の後交通動脈分岐部、椎骨脳底動脈など)、③形がいびつ(不整形)、瘤の上にブレブ(さらに小さな瘤)がある。

そのほか、喫煙歴、家族歴、複数個の脳動脈瘤がある(多発性)か、多発性嚢胞腎の既往があるかなどもあわせて考慮されます。

治療は血管内治療、あるいは開頭クリッピング術が行われます。


〈血管内治療(脳血管内手術)〉

カテーテルをおもに鼠径部(そけいぶ:下肢の付け根の部分)から動脈のなかを通して脳内に到達させ、コイルを動脈瘤の内部に詰めて血液が流れ込まないようにする、あるいはステントを血管の動脈瘤の入り口部分に留置して、動脈瘤内の血流を滞らせて血栓化する治療です。からだへの負担が少ないため、治療の主流になってきていますが、動脈瘤のできた場所や形などによって、適応とならない場合もあります。

ステントの改良が進んでおり、近年ではフローダイバーターというさらに目が細かいステントが導入されています (フローダイバーター留置術)。このステントは非常に細かい網目でできており、動脈瘤の発生した血管に留置するだけで、徐々に動脈瘤内の血液を血栓化し動脈瘤を閉塞させ、根治を目指すことも可能です。


〈開頭クリッピング術〉

全身麻酔下で頭蓋骨を一部切開して小さな窓をつくり、そこから入って動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟み、動脈瘤内腔の血液を血栓化して閉塞し、破裂を防ぐ方法です。血管内治療に比べて確実性が高く、再発率も低いですが、からだへの負担は大きくなります。

セルフケア

予防

脳動脈瘤はUCAS Japanという臨床研究の結果、できた場所や大きさ、形によって将来的な破裂の危険性が示されています。例えば、大きさで、3~4㎜では破裂率は0.36%、5~6㎜では0.5%で、7~9㎜では1.69%、10~24㎜では4.37%、25㎜以上では33.4%となっています。

近年は脳ドックを受ける人が増え、脳動脈瘤の発見率も上がっています。脳動脈瘤が見つかったら、何よりもまず破裂(くも膜下出血)を予防するために、禁煙・節酒に努め、高血圧症があれば血圧のコントロールを行うことが大切です。実際には多くの人たちは経過観察のみで済んでおり、過度に心配する必要はないといえます。とはいえ、生活上の注意と経過観察を怠らず、必要と判断された場合は、適切なタイミングで治療を受けるようにしましょう。

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本 司

この傷病に関連したQ&A

本サービスに掲載される情報は、医師および医療専門職等の監修の元、制作しております。監修者一覧および元となる情報はこちらからご参照ください。
みんなの家庭の医学 アプリイメージ
アプリでも

みんなの家庭の医学

歩数ゲームやデイリーアドバイス、無料健康相談が利用可能

QRコード

※ご所属先が本サービスを契約いただいている場合のみご利用いただけます。