一過性脳虚血発作いっかせいのうきょけつほっさ
最終編集日:2022/4/4
概要
一時的に血液が脳へ流れなくなり、突然、手足のしびれ、言語障害といった神経系の症状が起こる発作を指します。以前は24時間以内に症状が消えるものを一過性脳虚血発作(TIA)として脳梗塞と区別していましたが、現在は症状の持続時間だけでなく、検査による梗塞巣の有無で診断するようになってきています。
症状は、2~30分以内に治まります(多くの場合は15分以内)。このため、症状が治まると軽く考えてしまいがちですが、脳梗塞の前兆として重要視されており、適切な治療が行われないとその後、本当の脳梗塞に至る可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
原因
一過性脳虚血発作の原因は、太い血管や心臓内にできた血の塊である血栓が、脳内の動脈に流れて脳の細い血管を詰まらせることです。メカニズムは脳梗塞と同じですが、一過性脳虚血発作の場合、血栓が小さかったり溶けやすかったりして、血栓は自然に溶けます。心臓弁膜症や心房細動などの心疾患が原因となる場合もあります。また、動脈硬化などで脳の血管が狭くなっている場合に、血圧が下がったときにも発生します。
いずれも、血栓による血管の詰まりや血圧が元に戻れば、血流も回復して症状はなくなります。
症状
一過性脳虚血発作は、急に発生して5分以内にピークとなり、2~30分間つづきます。一過性脳虚血発作の症状は、脳内のどの血管が閉塞したかによって異なります。脳内の血管は大きく分けて内頸動脈系と椎骨脳底動脈系があります。内頸動脈系が閉塞した場合は、運動麻痺、感覚鈍麻、言葉が出ない・出てきづらい・理解できないといった失語症、片目の視野障害などの神経障害が起こります。椎骨脳底動脈系の症状としては、めまいやふらつき、歩行困難、嚥下障害、舌が回らずうまく話せないといったことが挙げられます。
検査・診断
受診時には発作が治まっていて症状がないことも多いため、まず詳細な問診が行われるとともに、原因や治療方法を探るための検査が行われます。心臓の弁や首の血管の異常を調べる超音波ドプラー検査、脳血管の梗塞や病変を調べるCT検査、MRI検査、MRA検査、心疾患を調べる心電図検査や心エコー検査などが行われます。
治療
一過性脳虚血発作の治療は、再発と脳梗塞への移行の防止を目的として行われ、内科的治療と外科的治療がありますが、発症の原因によって治療方法が異なります。
内科的治療では、抗血栓薬が投与されます。使用される薬剤は、心房細動や心臓弁膜症などが原因で血栓が生じた場合には、抗凝固薬を内服し、それ以外の原因が考えられる場合には、抗血小板薬を内服します。また、脳梗塞の危険因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心疾患などがある場合は、同時にそれらの治療や生活指導などが行われます。
検査の結果、内頸動脈が著しく狭くなっていることがわかった場合には、手術によって狭くなった部分の血管の内側の病変を取り除く頸動脈内膜剥離術が行われます。しかし、高齢者や心疾患などのため手術がむずかしい場合は、カテーテルを用いて内頸動脈にステントを挿入し、血管を広げる頸動脈ステント術が選択される場合もあります。
セルフケア
病後
一過性脳虚血発作が起きた場合、約10%の人が1年以内に、約30%の人が5年以内に脳梗塞を発症するといわれています。一過性の脱力、しびれなどの症状が現れ、一過性脳虚血発作が疑われる場合は、必ずその日のうちに受診して検査を受ける必要があります。
監修
神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長
福井和樹
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