前立腺がん

ぜんりつせんがん

最終編集日:2023/8/22

概要

男性特有の臓器である前立腺に発生するがんで、50歳くらいから発症のリスクが高くなります。年間の患者数は9万~10万人で、男性のがん罹患数の第1位となっています。

前立腺がんは進行が緩やかで、とくに高齢者ではその傾向が顕著であるため、早急に治療を開始するのではなく、定期的な検査で経過をみる「監視療法」が行われることもあります。また、再発までの期間が長く、5年以上経ってから再発することもあるため、5年生存率だけでなく、10年生存率も治療成績の指標とされています。

前立腺特異抗原(PSA)測定がスクリーニング(有病者のふるい分け)に有用とされ、自治体が検査費用の補助を行っている場合もあります。

原因

発症の原因はまだ解明されていません。発症リスクとして、肥満や動物性食品の過剰摂取などが挙げられていますが、関連性は明らかになっていません。しかし、家族歴があると、発症リスクは家族歴のない人の2.4~5.6倍になるとされ、遺伝的な要因の関与が考えられています。

前立腺がん
前立腺がん

症状

前立腺肥大症が頻尿や排尿障害などの自覚症状が出やすいのにくらべて、前立腺がんは自覚症状がみられないことがほとんどです。がんが進行すると、排尿障害、血尿、排尿痛などが現れます。さらに進行したケースでは、骨転移による腰痛などが起こります。

検査・診断

問診の後、PSA検査が異常値なら、さらにくわしく検査をします。PSA検査の基準値は、50~64歳で3.0ng/mL以下、65~69歳で3.5 ng/mL以下、70歳以上で4.0 ng/mL以下とされています。直腸診(前立腺触診)、MRI検査、経直腸前立腺超音波(エコー)検査(TRUS)などでがんの大きさ、様子などをみます。さらに、TRUSを用いた前立腺針生検で確定診断をつけます。TRUS前立腺針生検では通常、10~12カ所に針を刺して組織を採取しますが、MRI検査でがんの位置を特定できる場合には、多数採取する必要はなくなりました。

また、リンパ節転移の有無をみるためにCT検査が、骨への転移を調べるために骨シンチグラフィが行われます。前立腺肥大症、前立腺炎などとの鑑別が必要です。


●進行度診断

前立腺がんの進行は、腫瘍の広がり・深さ(進行にしたがって、T0~T4で表す)、リンパ節転移の有無(N0:なし、N1:あり)、遠隔転移の有無(M0:なし、M1:あり)の3つの視点から分類する「TNM分類」に加えて、がんの悪性度を表す「グリソンスコア」が用いられます。グリソンスコアは、前立腺針生検で複数個採取した組織を精査し、それぞれを悪性度の低い1点から悪性度の高い5点までで評価します。一般的に、グリソンスコア6以下は低悪性度、7は中間、8以上は高悪性度とされます。

治療

前立腺がんは、がんが前立腺内にとどまる初期の段階で(限局がん)、悪性度が低ければ(グリソンスコアが7以下)、手術と放射線治療では、がんの根治率、治療後の生存期間などに差がないことが明らかになっています。ほかの部位のがんでは放射線治療が手術の補助的な位置づけになっているものも多いなか、特徴的といえるでしょう。


●監視療法(経過観察)……超低リスク群(限局がん、PSAの数値が10ng/mL以下、グリソンスコア6以下)では、定期的にPSA値の経過をみながら、積極的な治療を開始すべきタイミングを探る「監視療法」が行われます。


●放射線治療(外部照射、組織内照射、粒子線)……前立腺がんの放射線治療には、からだの外からX線をあてる「外部照射療法」、放射線を発する物質を前立腺の内部に留置する「組織内照射療法」、陽子線や重粒子線などを照射する「粒子線治療」があります。外部照射・組織内照射療法は低リスクから高リスク群に、粒子線治療は高リスク群に適応されます。放射線治療では、治療中から治療数カ月後に起こる急性期合併症(排尿・排便障害など)、1年から数年後に起こる晩期合併症(直腸出血、血尿など)が起こり得ます。

組織内照射療法でおもに行われているのは、密封小線源療法(LDR)で、放射性物質をチタン製のカプセルに密封して前立腺のなかに複数個を留置する方法です。病巣に近いことや、直腸など周囲の臓器への影響が少ないことがメリットです。留置後1年で放射線はほぼ放出されなくなります。カプセルは入れたままにしておきます。周囲の人への放射線の影響はほぼありませんが、安全性を考慮し、治療後6カ月くらいは、妊婦と子どもへの長時間の接触を避けるようにします。


●手術(前立腺全摘術)……低リスク群と中間リスク群がもっともよい適応とされています。患者さんへの負担の少ない手術支援ロボットを用いたロボット手術が主流になっています。高リスク群に行う場合には、放射線治療やホルモン療法を併用するのが一般的です。手術の合併症として、尿失禁と勃起障害が現れます。尿失禁は、1年後には患者さんの約90%で生活に支障がない程度まで改善されるといいます。勃起障害の1年後の回復率は、約50%と考えられています。


●内分泌療法……前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けるため、アンドロゲンの分泌や作用を抑えてがんの増殖を抑制する内分泌療法が行われます(GnRHアゴニスト療法)。高リスク群や転移がん、全身状態によって放射線治療や手術ができない場合に適応されます。内分泌療法で効果がみられないときは、抗がん剤の併用や、分子標的薬(オラパリブ)が用いられます。

セルフケア

予防

前立腺がんは、限局がんの状態で見つけて適切な治療を受ければ、10年生存率は80%以上といわれています。50歳を過ぎたら、PSA検査を受けて、早期発見に努めましょう。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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