精巣がんせいそうがん
最終編集日:2024/3/26
概要
精巣(睾丸)は男性特有の臓器で、男性ホルモンの分泌、精子をつくるなどの生殖にかかわる働きをしています。陰嚢に左右1つずつ入っています。
精巣に発症する精巣がんは10万人に約1.7人とまれな病気ですが、多くのがんが加齢に伴って患者数が増えてくるのに対し、精巣がんは10~30代の若い世代に好発し、15~35歳の男性のがんのなかでもっとも頻度の高いものになっています。精巣がんの約95%が精子をつくるもととなる「精母細胞」から発生します。組織型によって大きく「セミノーマ」と「非セミノーマ」に分けられ、セミノーマが40~50%を占めています。非セミノーマには胎児性がん、絨毛性腫瘍、卵黄嚢腫瘍思春期後型などがあります。
原因
精巣がんの原因はまだ明らかになっていません。
リスク因子として、停留精巣(乳幼児期に精巣が陰嚢まで下りてきていない状態)の病歴、家族に精巣がんの罹患歴があることなどが挙げられています。停留精巣があった場合では、ない場合にくらべて2~10倍のリスクに、家族歴がある場合は4~8倍のリスクになるといわれています。また、反対側の精巣の精巣がんの罹患歴があると、リスクは20倍以上とされています。
症状
痛みを伴わない陰嚢の腫れがみられます(無痛性腫大)。下腹部の違和感、重苦しさ、鈍痛が起こることもあります。急速に大きくなったり、炎症を伴う場合には、痛みや熱感が現れます。また、精巣がんが産生するホルモンの影響で、乳首の痛み、女性化乳房(乳房の腫れ)をきたす場合があります。
進行して転移を起こした場合、腹痛、呼吸困難、頸部リンパ節の腫れなどが起こります。
検査・診断
陰嚢の触診と超音波(エコー)検査、血液検査(腫瘍マーカー)が行われます。腫瘍マーカーとしては、LDH、hCG、AFPがあり、がんの組織型の診断にも用いられます。ほかの臓器への転移を調べるために、全身のCT検査や、PET-CT検査、すでに肺転移がある場合には脳転移の可能性を考えて脳のMRI検査などが行われます。
確定診断は、後述の「高位精巣摘除術」で切除した精巣組織の病理検査によってつけられます。陰嚢水腫、精巣上体炎、精巣炎、精巣捻転、鼠径(そけい)ヘルニアなどとの鑑別が必要です。
治療
すべての症例で、高位精巣摘除術が行われます。鼠径部を切開して、がんのある側の精巣とその周囲の組織(精巣上体、精索など)を摘出する方法で、組織診断も兼ねています。その後、がんの組織型に沿って、治療法が選択されます。
精巣がんは進行が速く、転移しやすい、再発しやすい性質をもっていますが、現在では転移のある症例でも、約80%に治癒が見込めるようになってきています。
●セミノーマ
転移がないセミノーマは、経過観察が行われます。精巣がんの再発率は約20%と比較的高いものですが、経過観察中に腫瘍マーカーやCT検査などで再発が確認されたら、化学療法を行います。再発リスクが高い症例では、高位精巣摘除術後に化学療法、あるいは放射線療法を組みあわせます。リンパ節転移があるセミノーマは、化学療法が選択されることが多いようです。2~3剤の抗がん剤を組みあわせるもので、薬剤の略語から、BEP療法、EP療法、TIP療法などの名称がついています。転移巣が小さければ放射線療法を行うこともあります。化学療法後に腫瘍の残存が認められた場合、3cm以下であれば経過観察が行われますが「後腹膜リンパ節郭清」で転移しやすいリンパ節を切除する手術が行われることもあります。開腹手術、あるいは腹腔鏡下手術となります。
●非セミノーマ
非セミノーマでは、がん細胞が周辺の血管やリンパ管に広がっている「脈管侵襲」があるかどうかで治療法が異なります。脈管侵襲がない場合、経過観察、または後腹膜リンパ節郭清が行われます。脈管侵襲がある場合にはその2つに加えて化学療法が行われます。
非セミノーマは放射線療法の効果が見込めないとされています。
【治療後の妊孕性(にんようせい:妊娠するための力)】
残ったほうの精巣の機能が正常であれば、治療後に子どもをつくることは可能です。しかし、治療に伴って生殖機能がダメージを受けることもあるため、主治医とよく相談して治療に臨みましょう。治療前に精子を凍結保存する方法もあります。
セルフケア
予防
好発年齢が仕事や学業で忙しい時期でもあり、また恥ずかしさなどから受診をためらう可能性もありますが、精巣の腫大に気づいたら、早めに泌尿器科を受診することがすすめられます。
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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