アディクション(依存)
あでぃくしょん・いぞん

最終編集日:2022/3/11

概要

アディクション(依存、嗜癖〈しへき〉)とは、ある特定の物質や行動、人間関係にとらわれ、コントロールが利かなくなる精神疾患のひとつです。おもな対象にはアルコール、たばこ、薬物、パチンコ、インターネット、買い物などがあり、複数のものに依存したり対象が移行していったりする「クロスアディクション」の状態もしばしばみられます。

症状が悪化すると、日常生活や心身の健康に影響を及ぼしたり、人間関係に問題が起きたりすることがあります。


原因

習慣的なアルコールの摂取や薬物の使用、ギャンブル、ゲームなど特定の行為をくり返していると、脳の神経回路が変化していきます。

例えば、アルコールや薬物を摂取すると脳内にドパミンという快楽物質が分泌され、それが中枢神経に作用することで快感や喜びを得やすくなります。このしくみは脳の「報酬系」といわれていて、くり返し報酬を求めるうちに、脳内にその神経回路ができていきます。この報酬系回路が、ギャンブルによって得られるスリルや、ゲームで体験する興奮にも同じように働いていると考えられています。


また、過度な飲酒や薬物使用が習慣化するとその状態に慣れてしまい(耐性がつき)、快感や喜びを覚える中枢神経の機能が低下します。耐性がつくと、脳はさらに報酬を求め、飲酒量や薬物の使用量が増えていきます。

アディクションはこのような脳の回路の変化によって起こるもので、一度その回路ができてしまうと自分の意思ではコントロールがむずかしくなります。


症状

さまざまなアディクションに共通する症状・特徴には次のようなものがあります。

●コントロールできない

飲酒やギャンブル、ゲームなど、依存対象をやめたくてもやめられない、適正量や適正時間を守れない状態になります。頻度や量がエスカレートしていき、症状が悪化していきます。


●依存対象が生活のなかで最優先となる

家族や仕事、将来などよりも依存対象が最優先の生活となり、極端な考え方に移行します。通常の社会生活が困難となり、引きこもりになったり仕事に行けなくなったりして、生活に支障が出ることがあります。


●問題を否認する

現実を見ず、依存対象に没頭することで生活や家庭内の問題を忘れようとする傾向があります。また事実を認めずに攻撃的になることがあります。


●家族や周囲の人を巻き込む

家族が借金の肩代わりをするなど、周囲の人を巻き込む場合があります。また、暴言を吐いたり暴力をふるったりして、相手を傷つけることがあります。


●健康面に問題が出てくる

例えば、アルコールや薬物などの離脱症状として、手足のふるえや発汗、不安、イライラ、不眠、てんかん発作、うつ状態、幻覚、幻聴などが起こることがあります。

規則正しい生活が困難となるため、睡眠障害や抑うつなど精神的な疾病につながることもあります。


検査・診断

アディクションは、アルコール、たばこ、薬物などの「物質依存」、ギャンブル、パチンコ、インターネット、ゲーム、買い物、窃盗、摂食障害、自傷行為などの「行動(プロセス)依存」、DV、恋愛、性、共依存、児童虐待などの「関係依存」の3つに分類されます。

診断では、それぞれの対象への依存状態、日常生活・社会生活への影響、精神・身体状況などがくわしく分析されます。

さらに、依存症ごとの診断基準に基づいて判断されます。

身体面の症状が現れている場合は、症状に適した検査が行われます。


治療

アディクションは治療可能な病気ですが、そのためには依存対象である物質の摂取や、依存対象となっている行動をやめるだけでなく、「やめつづけること」がとても大切になります。

基本的な治療としては、認知行動療法やカウンセリングによる精神療法、グループでの集団療法、自助グループへの参加などがあります。アルコール依存症の場合は抗酒薬や、飲酒欲求を抑える飲酒量低減薬を用いた治療が行われることがあります。

治療の途中で、再び依存対象となっている行為をしてしまうこともあるため、本人に合った治療法で根気よく治療をつづけることが重要です。依存症の克服には家族や周囲のサポートが大切です。


セルフケア

予防

何かにのめり込む、とらわれてしまうことは誰にでも起こる可能性があります。ひとりで悩まずに、早めに専門機関や相談窓口に相談しましょう。また、本人は自覚がなかったり、認めなかったりするケースも多いため、依存症の疑いがあると周囲の人が気づいた際には、すみやかに専門機関などを頼りましょう。

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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