ブルガダ症候群
ぶるがだしょうこうぐん

最終編集日:2024/6/19

概要

30~50代の男性に好発し、突然死の原因となり得る心室細動や心室頻拍の発作を起こすため、注意が必要な状態の人をいいます。男女比は9対1で圧倒的に男性が多く、不整脈の発作は深夜から明け方に多く起こります。

心電図検査で、コーヴド(弓状)型、あるいはサドルバック(馬鞍)型と呼ばれる特徴的な異常波形(ブルガダ心電図)を表します。心電図のJ点と呼ばれる部分に異常がみられる「J波症候群」のひとつに分類され、わが国での発症頻度は、約1000人に1人とされています。かつて「ぽっくり病」といわれていたものの多くは、ブルガダ症候群の可能性があるといわれています。ブルガダ症候群は国の指定難病になっています。

原因

原因はまだ明らかになっていません。

遺伝子異常が患者さんの15~30%に認められ、そのほとんどはSCN5Aという遺伝子の変異です。突然死の家族歴がある場合には、遺伝子異常を疑います。

また、男性に多いことから、男性ホルモンの関与なども要因として考えられています。

症状

多くは無症状(無症候性)で、健康診断などで偶然見つかります。

有症状(有症候性)の場合、失神(意識喪失)を起こす、就寝中に呼吸が苦しくなる(夜間苦悶様呼吸)などがみられます。致死性不整脈発作が起こると、脳を含めた全身への血流が停止するため、前触れもなく意識を失い、呼吸が停止することもあります。

検査・診断

ブルガダ心電図がみられた場合は、丁寧な問診、血液検査、胸部X線検査、12誘導心電図、24時間ホルター心電図、運動負荷試験、心臓超音波(心エコー)検査、心臓電気生理学的検査(EPS)などを行って、心臓の状態や心機能を精査します。特に第一または第二肋間上で心電図を記録すると、典型的な波形が出ることがあります。

心電図からブルガダ症候群と診断がつきにくいケースでは、特定の不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬)を投与して不整脈を誘発する薬物負荷試験が行われることもあります。

ほかの不整脈疾患との鑑別が行われます。また、失神はブルガダ症候群などの心臓に原因がある「心原性失神」だけではありません。失神の原因を特定することも重要です。

治療

ブルガダ症候群の治療法はまだ確立されていません。治療の目的は心室細動などの致死性不整脈の発作を防ぐことになります。

不整脈発作のリスクは以下のように分類されています。


●発作リスク:低……ブルガダ心電図があり、薬物負荷試験で不整脈が誘発されるのみで、無症状。

●発作リスク:中低……原因不明の失神の既往(心原性ではない)、突然死の家族歴、SCN5A遺伝子変異がある、EPSで心室細動が誘発された。

●発作リスク:中高……心原性の失神の既往、カヴァード型のブルガダ心電図、男性。

●発作リスク:高……心肺停止に陥ったことがある、心室細動が認められる。


発作リスク低では、生活指導を受けて発作につながる行為(過度の飲酒、食べすぎ、発熱を放置するなど)を改めます。抗不整脈薬を服用することもあります。


発作リスク中低、発作リスク中高・高では、植込み型除細動器(ICD)の植込みを行います。ICDはペースメーカーに似た医療機器(デバイス)で、名前のとおり、体内に植込む除細動器(自動体外式除細動器〔AED〕のように心臓に電気ショックを与えるデバイス)です。鎖骨の下のあたりに本体を植込み、血管から心臓までリード(電線)を通します。致死性不整脈が起きて心停止が起こると本体が感知し、電気ショックを与えて心拍を再開させます。また、心停止までには至っていない不整脈発作に対して、頻脈を改善する「抗心拍ペーシング」という機能もあります。

ICDの植込みによって、突然死は100%防げるとされています。

ICD植込み後も、抗不整脈薬を用いて、発作を防ぐ治療を行います。

また、心臓のなかで不整脈が起こる場所が特定できる場合には、心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)で不整脈を起こす心筋を焼いて発作を防ぐ治療を行うこともあります。


セルフケア

病後

ブルガダ症候群では、過度の飲酒や食べすぎ、発熱は不整脈発作の引き金になることがわかっています。節酒・腹八分目に努め、発熱時には速やかに受診して解熱を行うようにします。発作を招く薬剤があるため、市販薬・処方薬は、いずれも医師の指導に従って服薬します。ほかの病院・専門科を受診する際には、ブルガダ症候群の既往歴があることを必ず伝えましょう。

予防

ブルガダ症候群で無症状の場合、心室細動の発生率は1年に0.3~0.9%でそれほど高いわけではありません。しかし一度でも致死性不整脈の発作を起こしたケースでは、発作の再発生率は年に8.4~10.7%と高くなっています。

無症状で見つかることが多いため、治療の必要性を説かれても実感がわかないという人も少なくありません。しかし、発作は突然起こり、その1回の発作が生命にかかわることもあります。健康診断などでブルガダ症候群の疑いの指摘があったら、必ず専門医の診察を受けましょう。



監修

神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長

福井和樹

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