乳幼児突然死症候群(SIDS)にゅうようじとつぜんししょうこうぐん
最終編集日:2024/6/21
概要
乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、それまで元気に育っていた子どもが、特に予兆もなく、多くの場合は睡眠中に突然亡くなってしまう状態を指します。SIDSは窒息や事故ではなく、また、解剖を行っても、死因を特定することができません。乳児期前半に発症リスクが高く、生後2~6カ月にもっとも多くみられます。SIDSの「Infant」は通常は1歳未満の児を意味しますが、実際には1歳を過ぎて起こる場合もあります。男女比は3対2で男児に多く、また冬に多いのも特徴です。
国内では、出生6000~7000人あたり1人の頻度で起きています。
原因
原因はまだわかっていません。
神経伝達物質であるセロトニンにかかわる「セロトニントランスポーター」「イオンチャネル」というたんぱく質、免疫にかかわる「インターロイキン10(IL-10)」などの遺伝子変異との関連も検討されていますが、いまだ結論には至っていません。SIDSの4.3%に遺伝性不整脈がみられるとの報告もあります。
症状
睡眠中の乳児が息をしていないことで気がつきます。顔色は蒼白(そうはく)で、呼んだり、軽くたたくなどの刺激を与えても反応がありません。
検査・診断
救命措置がとられ、X線検査、血液検査などが行われ、原因を探ります。
保護者への問診によって、①突然死を起こすような病気(染色体異常、何らかの先天性疾患、重症脳性麻痺など)の既往歴がない、②その時点で突然死の原因となるような病気にかかっていない、③外傷がない、④ミルクの誤飲などがない、ことなどを確認します。
死亡の原因が確定できない場合にSIDSと診断されますが、そのためには解剖して精査する必要があります。やむを得ず解剖がなされない場合には死因不詳とされます。
治療
●心肺蘇生法
SIDSのほとんどは自宅で発症します。心肺蘇生措置がその後の生存率にどれくらいの効果があるかのデータはありませんが、少しでも心拍を再開させる努力をします。
呼びかけや足の裏をたたいても反応がなければ、救急車を呼ぶとともに胸骨圧迫と人工呼吸を行います。救急要請に手間取るようであれば、2分間の胸骨圧迫を優先したのちに、通報します。パートナーがいる場合は、通報と胸骨圧迫を分業で行います。近くにAED(自動体外式除細動器)があれば、それを用いて行います。
「胸骨圧迫を30回行った後、人工呼吸を2回行う」ことを繰り返します。救急要請をすると、電話を通じて心肺蘇生法を指導してくれるので、そのとおりに行いましょう。
セルフケア
予防
SIDSを完全に予防する方法はありません。しかし、以下のようなことを実践すると、発症率を低く抑えられることがわかっています。
●仰向けで寝かせる……うつぶせ寝にするよりもSIDSの発症率は低くなります。
●できるだけ母乳で育てる……母乳のほうが、人工乳よりもSIDSの発症率が低いということが報告されています。
●禁煙する……たばこはSIDSのリスク因子となっています。妊娠中から、また同居する家族も禁煙に努めましょう。
こども家庭庁や厚生労働省ではSIDSについての啓発活動を行い、上記の実践をすすめています。その結果、国内のSIDSの発症率は減少傾向にあり、1997年はSIDSの死亡数が538人だったのが、2022年には47人になっています。油断せずに予防に努めましょう。
監修
川崎医科大学 小児科学 教授
中野貴司
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