心房中隔欠損症

しんぼうちゅうかくけっそんしょう

最終編集日:2023/7/5

概要

心房中隔欠損症は先天性の病気で、先天性心疾患の約7%を占める、もっとも頻度の高いもののひとつです。

心臓は4つの部屋に分かれていて、上に左右の心房、下に左右の心室があります。心房中隔欠損症は右心房と左心房を分ける「心房中隔」という筋肉の壁の発達が十分でないために一部分が欠損して、穴が開いている病態です。

欠損している部位別に、二次孔欠損型、一次孔欠損型、静脈洞型、冠静脈洞型の4つに分けられ、二次孔欠損型がもっとも多いとされています。

同じように心房中隔に穴が開いている疾患に「卵円孔開存症」があります。卵円孔は、胎児の間にだれにでも存在する心房中隔の穴ですが、生後2~3日で自然に癒着して閉鎖するようになっています。卵円孔開存症は癒着が不十分で閉鎖されなかった状態を指します。心房中隔欠損症の二次孔欠損型は卵円孔の場所に欠損がみられるため、2つの疾患は混同されがちですが、臨床的には別の疾患とされています。

原因

心臓は発生学的に、1つの内腔のある筋肉の塊から分化して4つの部屋ができてきます。このうち、左心房と右心房を分ける心房中隔ができる生成の過程に異常があることで、完全に閉鎖されずに穴が残ることで生じます。なぜ先天的な異常が起こるのかは、まだ明らかになっていません。

症状

心房中隔欠損症の多くは、健康診断での心雑音や、他疾患の検査などで心電図・心臓超音波(心エコー)検査での異常を指摘されて見つかることが多いようです。

小児期には、この病気に特徴的な症状はなく、走ると息切れがする、かぜを引きやすいなどがみられるくらいです。しかし欠損部分が大きい、ほかの心疾患を併発しているなどの場合は、呼吸困難、むくみ、せき、疲れやすいなどの症状が現れることがあります。

一方、成人するまで無症状のことも少なくありません。その場合、長年にわたる右心房・右心室への過剰な血流により、右心房・右心室の心拡大、心臓の弁(三尖弁や僧帽弁)の異常、肺高血圧症などが現れ、動悸、むくみ、息切れなどの心不全症状が起きてきます。経過がゆっくり進行するため、中高年になるまで気づかない場合もあり、40歳以上になって初めて見つかる先天性心疾患でいちばん多いのは、心房中隔欠損症といわれています。


●病態

心臓の右側の部屋である右心房、右心室は全身から戻った血液を受け入れ、肺に送る働きをしています。一方、左側の部屋である左心房、左心室は肺から血液を受け取り、全身に送り出す働きをしています。左心房・左心室の内圧は右心房・右心室の内圧よりも高くなっています。そのため、心房中隔に穴が開いていると、左心房→左心室の血液の流れの一部が右心房にも流れ込み、さらに右心室から肺に向かう血流が増加します。この状態が長くつづくと、右心房と右心室が徐々に拡大し(心拡大)、数十年の経過で拡大した心筋が弾力性を失ってポンプとしての機能を果たせなくなります(右心不全)。

また加齢に伴い、三尖弁閉鎖不全症や僧帽弁閉鎖不全症の合併が増加し、上室性の不整脈が起きたりします。さらに右心室から肺につながる肺動脈に通常よりも多い血液が流れ込むことで肺動脈にも負荷がかかり、肺高血圧症の原因となります。

検査・診断

心電図・胸部X線・心エコー・造影CT・心臓MRI・経食道心エコー(口から胃カメラのように超音波内視鏡を挿入して、食道から心臓をみる)検査、心臓カテーテル検査(手首やひじ、太ももの付け根の血管からカテーテルという細い管を入れて心臓に到達させ、心臓のくわしい形態、心筋や弁の動き、血管造影検査などを行う)などを行い、欠損の場所、大きさ、形状を精査します。同時にほかの心疾患の有無、肺高血圧症などの合併の有無も調べます。

治療

通常、穴の大きさが5㎜以下の場合は経過観察を行います。

治療には、心不全症状や不整脈に対する薬物療法と、開いた穴を閉じる「心房中隔閉鎖術」の2つがあります。心臓から肺に流れ込む血液と、全身に送られる血液の比は健康な状態では1:1ですが、心房中隔欠損があると、2:1~3:1と、肺に多く流れ込むことになります。この割合が1.5:1を超える場合に、閉鎖術を考慮します。また、穴の大きさが10㎜以上の場合も閉鎖術が適応されます。閉鎖術には経皮的心房中隔閉鎖術と、外科的心房中隔閉鎖術があります。


●経皮的心房中隔閉鎖術(カテーテル治療)……基本的に、二次孔欠損型が対象となります。太ももの付け根の血管からカテーテル(細い管)を挿入して心臓に到達させ、閉鎖栓を用いて穴を塞ぎます。閉鎖栓はニッケルとチタンの合金で、カテーテルのなかを折りたたまれて運ばれ、患部で傘のように開いて穴を塞ぎます。閉鎖栓の大きさや形状に、穴の大きさや形状があわないと、適応となりません。

●外科的心房中隔閉鎖術……カテーテル治療が適応にならない場合に、手術で穴を塞ぐ治療が行われます。穴の大きさによって、患者さんの心膜を使ったパッチを用いる方法と、直接穴を縫合する方法から選択します。最近は、皮膚切開をできるだけ小さくする小開胸による手術(MICS)も行われています。


〈子どもの治療の考え方〉

欠損部の穴の大きさが5㎜未満であれば、10歳くらいまでに自然に閉じることもあるため、経過観察を行います。穴が大きい場合は、症状がなくても、将来的に心不全や肺高血圧症のリスクが高くなるため、治療がすすめられています。カテーテル治療は体重が15㎏以上あれば、また外科的心房中隔閉鎖術は体重が6~7kgでも実施が可能とされています。

監修

神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長

福井和樹

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