喉頭乳頭腫こうとうにゅうとうしゅ
最終編集日:2025/3/17
概要
喉頭乳頭腫は、のどの声帯とその周辺に発生する良性腫瘍です。
成人だけでなく乳児から発症することもあり、若年型と成人型に分けられています。多発・再発しやすいのが特徴で、若年型のほうが再発率が高いとされています。
若年型は、生後6カ月~5歳くらいまでの発症が多く、再発しても思春期を過ぎると寛解(完治ではないが病状が落ち着いた状態)するケースがほとんどです。成人型の発症のピークは20~40歳代で、男性に多くみられます。若年型、成人型いずれも腫瘍ががん化することはまれです。
原因
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって起こります。HPVの6型と11型が発症や重症化に関与しています。しかしHPVの存在が必ずしも発症につながるわけではないことから、そのほかにも要因があると考えられています。
HPV感染の経路として、出産時の母体から感染、性的接触(オーラルセックスなど)が挙げられます。母体からの感染には、母親の尖圭コンジローマ(HPVが原因となる性感染症)の既往がかかわるといわれます。
そのほかの発症の誘因として、逆流性食道炎、喫煙、過度なアルコール摂取、刺激の強い食事などが挙げられます。
症状
嗄声(かすれ声、声がれ)が現れます。腫瘍が大きくなると飲み込みにくさ、努力呼吸(呼吸の際に胸郭や首・肩などを大きく動かす)、呼吸困難、喘鳴(呼吸の際にぜーぜー、ひゅーひゅーと音がする)などがみられます。
検査・診断
症状から喉頭乳頭腫が疑われたら、喉頭内視鏡(喉頭ファイバースコープ)で声帯周辺を調べます。腫瘍の一部を採取して組織検査を行うこともあります。
悪性腫瘍、気管支喘息、アレルギー疾患、気管支炎などとの鑑別が重要です。
治療
病変を切除あるいは焼灼・蒸散する外科的治療が基本で、レーザーによる蒸散が一般的です。喉頭乳頭腫は再発をくり返し、治療も複数回になります。病変が呼吸機能や発声機能をもつ部位であるため、機能を損なわないよう慎重に手術が行われます。
とくに若年型では腫瘍の大きさや腫瘍の発育速度、患者の全身状態をみながら、治療が進められます。乳幼児では気管切開が必要なケースもあります。
薬物療法として抗ウイルス薬やHPVワクチンなどが用いられることもありますが、現時点では保険適用外で、標準治療として確立されていないのが現状です。
セルフケア
療養中
嗄声や息苦しさを感じたら、耳鼻咽喉科を受診しましょう。乳児の場合は、泣き声がかすれる状態が続く、機嫌が悪い、母乳・ミルクを飲まない、呼吸しにくそうな様子などがみられたら、早めに耳鼻咽喉科、あるいは小児科を受診します。
喉頭乳頭腫は良性腫瘍でありながら、その再発率の高さが患者の大きな負担になります。若年型での平均手術回数が18回以上であったという報告もあるほどです。再発を早期に把握するためにも、定期的な受診を続けることが肝要です。
※2025年3月17日時点の内容です。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原 大次