扁桃周囲膿瘍へんとうしゅういのうよう
最終編集日:2023/2/24
概要
扁桃周囲膿瘍は、細菌感染などによって扁桃炎の炎症が周囲の組織に広がった症状の「扁桃周囲炎」が進行した病気です。
扁桃炎の炎症が、扁桃を覆う被膜と咽頭収縮筋(ものを飲み込むときに使われる筋肉)のすきまに広がることで扁桃周囲炎が生じ、さらに悪化してうみがたまると扁桃周囲膿瘍になります。左右どちらかの扁桃にうみがたまることで、のどの痛み、発熱、飲み込みにくさ、口臭などをひきおこします。
扁桃周囲炎は数時間で呼吸困難、縦隔炎、敗血症に至る、耳鼻咽喉科のなかでもっとも緊急性の高い病気のひとつです。年間2人ほどの死亡例が報告されていて、さらに進行した扁桃周囲膿瘍も生命にかかわる重篤な病気です。
原因
扁桃周囲炎から進行して菌がうみの塊をつくった状態が扁桃周囲膿瘍で、複数の細菌が原因となります。おもな原因菌には、嫌気性菌、化膿性連鎖ウイルス色ブドウ球菌、インフルエンザ菌などがあります。
症状
扁桃周囲膿瘍では、扁桃が大きく腫れ上がり、発熱、のどの激しい痛み、嚥下時(ものを飲み込むとき)の激しい痛みといった症状が起こります。さらに周囲の筋肉にまで炎症が広がると、痛みが原因で食事や水分の摂取や、話すことさえ困難となります。また、のどの粘膜全体が強く腫れるため、言葉が不明瞭になることもあります。
扁桃周囲にたまったうみが、首(頸部)や胸部に広がってしまうと、深頸部膿瘍や咽後膿瘍、縦隔膿瘍、膿胸をひきおこします。このような状態になると、呼吸困難や窒息をきたし、生命にかかわることもあり、緊急手術が必要になります。
検査・診断
問診時に痛みや含み声などの症状を確認し、扁桃周囲の腫れや発赤の有無を調べます。同時に鼻からファイバースコープを挿入して、のどの奥まで腫れが広がっていないか確認します。うみがたまっている部位が確認できない場合にはCT検査を行う場合もあります。そのほか、原因となっている菌を特定するために、腫れている部位に針を刺してうみを採取する検査や、炎症の程度を確認する目的で血液検査を行うこともあります。
治療
膿瘍が形成されている部位には血流がなく、抗菌剤が届かないため、うみを十分に排出することが治療の基本になります。うみを排出するために膿瘍を針で刺したり、切開を行います。腫れが強い場合には、ステロイドを投与して炎症を抑えたり、気道狭窄が起きている場合は、気管内挿管や気管切開などの処置を行うことがあります。
扁桃周囲膿瘍は、いったんよくなっても再発することが多くあります。根治するためには、口蓋扁桃の摘出手術を検討する必要があります。
セルフケア
予防
かぜなどの後、のどの腫れや痛みが残るようであれば、まず耳鼻咽喉科を受診し、扁桃周囲膿瘍の有無を確認することが大切です。持病がない健康な人でも、症状が進行した場合は生命にかかわることもあるため、早期治療が重要となります。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原大次
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