耳下腺炎じかせんえん
最終編集日:2022/4/4
概要
耳下腺は、両側の耳の下にある唾液を産生するもっとも大きな唾液腺で、この耳下腺に炎症が起きる病気の総称が耳下腺炎です。
いちばんよく知られているのが「流行性耳下腺炎」で、多くの人が子どものときにかかる、通称「おたふくかぜ」と呼ばれる病気です。流行性耳下腺炎は一度かかると生涯免疫ができて、再度かかることはほとんどありません。一方、くり返し耳下腺に炎症が起こるのが「反復性耳下腺炎」です。ほかにも、細菌感染による「急性化膿性耳下腺炎」、耳下腺に腫瘍ができる「耳下腺腫瘍」、唾石(唾液に含まれるカルシウム分が固まってできる石)が原因の「唾石症」、自己免疫疾患と考えられている「シェーグレン症候群」などがあります。
原因
おもな耳下腺炎の原因は次のとおりです。
●流行性耳下腺炎
通称「おたふくかぜ」はムンプスウイルスによる感染で、子どもの場合は保育施設や学校で集団感染するケースが多くみられます。大人の場合は免疫力の低下などが関係しています。
●反復性耳下腺炎
おもにムンプスウイルス以外の細菌や、ウイルス感染が原因で、唾石や腫瘍、シェーグレン症候群などが関係していることもあります。
●急性化膿性耳下腺炎
口のなかの唾液の出口からの細菌感染で、口腔内の不衛生や免疫力の低下が関係しています。
●耳下腺腫瘍
耳下腺内に腫瘍ができます。ただ、原因ははっきりわかっていません。
●唾石症
唾液に含まれるカルシウム分が固まってできる唾石が、唾液の流れる管を狭くしたり塞いだりすることで炎症が起きます。
●シェーグレン症候群
自己免疫疾患であり、原因ははっきりわかっていません。
症状
ほとんどの耳下腺炎で耳の下部が腫れる症状が現れます。ほかにも、耳下腺の痛み、発熱、倦怠感などが現れることがありますが、原因や対処法はそれぞれ異なります。耳の下部の腫れが気になった場合は、耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
検査・診断
まず問診で、これまでの症状の経過や流行性耳下腺炎にかかったことがあるかを確認し、触診で耳下腺の腫れを調べます。
症状や疑われる耳下腺炎の種類によって、血液検査や超音波(エコー)検査、唾液腺撮影などが行われます。また、CT検査やMRI検査などの画像検査が行われることもあります。
治療
耳下腺炎の治療は対症療法が主体です。痛みがあれば痛み止めを、熱があれば解熱薬を、細菌感染が疑われれば抗生物質(抗菌薬)を使った治療が行われます。口腔内の清掃と安静にすることも大切です。
また、耳下腺腫瘍や唾石症の場合は、腫瘍や唾石を切除する手術が行われることもあります。
セルフケア
療養中
流行性耳下腺炎は第2種感染症のため、耳下腺の腫れが起こってから5日以上経過し、全身状態が回復するまでは、学校などは休まなければならないことになっています。
予防
流行性耳下腺炎の予防にはワクチン接種が有効です。
また、耳下腺炎予防の基本は口腔内を清潔に保つことです。歯磨きやうがいをこまめにして、う蝕(むし歯)があれば放置せずにきちんと治療しましょう。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原大次
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