コロナ下の受診控えの悪影響(高血圧編) ~いつも通りの服薬が大切~
最終編集日:2022/7/11
約1000万人が患っている「国民病」ともいえる高血圧や、それに付随するさまざまな生活習慣病は、重症化する前の治療が肝心です。重症化して患者さんを治せなかった大学病院での経験から、重症化する前の高血圧の治療の重要性を痛感し、2021年9月に高血圧クリニックを開院しました。当院にはコロナ下で内服を中断した患者さんが多く受診されました。全国的にみても、コロナ感染のリスクが医療機関への受診頻度を低下させたのは間違いありません。わが国では、新型コロナウイルス流行の第一波(2020年3~6月)の期間中、高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症の患者さんの平均受診回数は、感染拡大前に比べて総じて減少しました(*1)。
受診控えの背景には、行政からの自粛の勧告と、患者さんの恐怖心が考えられます。病院や通院途中でのコロナ感染への不安に加え、高血圧や糖尿病などの慢性疾患をもつ人や高齢者がコロナ感染すると、重症化しやすいという報告が散見されたためかもしれません。また、高血圧や糖尿病などの慢性疾患が無症状であることが受診控えに影響したと思われます。ウィズコロナ以降の在宅ワーク下では、食事摂取が増え、逆に運動量は減少したことで肥満が進行し、診断されていない高血圧、脂質異常、糖尿病などの慢性疾患が増加している状況も予想できます。受診控えによって定期的な診察や検査の機会が奪われ、無症状の段階での早期発見が困難になったと危惧しています。
治療の中断で症状が悪化した例です。コロナ感染した心臓病の患者さんが外出不可のため受診できず、常備薬が切れ、徐々にむくみが出始めて最終的に息切れで苦しみ、救急要請の末、入院に至ったケースがあります。また、受診控えの期間に毎日内服すべき薬を自己判断で2日に1回、または調子が悪いときに内服したという患者さんもみられました。
コロナ感染のリスクがあっても、これまで通り処方された薬の内服を正しく継続することが大切です。また担当医には余裕をもって多めに処方してもらうことをおすすめします。また、コロナ感染の場合、かかりつけ医以外の医療機関に入院加療することが多いため、お薬手帳は常に携帯しておくことも重要です。
外出の自粛で動かない毎日が続くと、血圧が上がったり、体重が増えたり、足腰が弱くなります。体重測定や血圧測定で身体の状況を把握することをおすすめします。ウォーキングなどのちょっとした運動も重要です。自粛は「じっとすること」ではありません。自粛とは「自分から進んで行いを改めて行動すること」です。じっとするのでなく、行動が大切です。
(*1)Physician visits and medication prescriptions for major chronic diseases during the COVID-19 pandemic in Japan: retrospective cohort study(BMJ Open 2021年7月23日)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34301667/
監修
田園都市高血圧クリニックかなえ 院長
米山喜平
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