抗菌薬が効かなくなるAMR(薬剤耐性)とは? ~ポストコロナの世界的課題~
最終編集日:2022/7/1
●抗菌薬を無効化する細菌の変化、AMR
AMR(薬剤耐性)とは、Antimicrobial Resistanceの略で、抗菌薬(抗生物質とも呼ばれる)に対する耐性(薬剤に耐え、効きにくくなる、効かなくなること)を意味します。
細菌にとって抗菌薬は猛毒のようなもので、さらされると自衛手段として抗菌薬を無効にしようとします。その手段としては、体内に抗菌薬を入れないようにする、体内に入った抗菌薬を外に出そうする、そして体内に抗菌薬が入っても遺伝子レベルで変異を起こして抗菌薬に対処するなどがあります。細菌のこうした耐性は、細菌が生まれつきもっている場合と、他の細菌からもらい受ける場合、そして抗菌薬の使用が誘因となるパターンなどが知られています。
●子どものかぜに抗菌薬? 注意したいこと
小児科の現場での問題もあります。子どもはよくかぜをひくため、健康な大人に比べると、かかりつけ医を受診する機会が多くなります。その際に、かぜという病名で抗菌薬を処方され、漫然と使われてしまうと、耐性菌ができることがあります。小児のかぜの原因の9割方はウイルスであることが医学的にも研究されていますが、抗菌薬はウイルスに対して無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されることがあります。こうした場合、かぜに抗菌薬は効かないと聞いたのですが? と医師に確認してもらってもよいと思います。
また、医師が抗菌薬が必要と判断して抗菌薬を処方した場合は、処方された抗菌薬を指示通りに使うことが大事です。抗菌薬がまだ残っているのに、子どもが元気になったからと飲ませるのをやめたり、たまたま残っていた抗菌薬を子どもが次に熱を出したときに使うなど、親の判断による行動もよくある話です。こうした間違った方法での抗菌薬の使用は、耐性菌が増える事態を招くことにもつながりかねません。
●AMRはSDGsにも含まれる世界的な課題
現在、AMRは日本でも大きな問題となっており、周知のためのさまざまな取り組みが行われています。最近よく聞かれるSDGs(持続可能な開発目標)の中でも、AMRについて多く言及されています。また、コロナ後に世界で問題となるのはAMRではないかともいわれています。厚生労働省が委託事業として、AMR臨床リファレンスセンターという組織を立ち上げてさまざまな広報活動を行っています。同センターのサイトには、一般向けのわかりやすい資料が多く掲載されており、AMRについての知識を深めることができます。
監修
国立成育医療研究センター感染症科
明神翔太
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