コロナ下の受診控えの悪影響(生活習慣病編)
最終編集日:2022/6/17
厚生労働省や日本医師会などが発表したデータによると、新型コロナ感染の拡大によって、全国の医療機関の受診者数が最も減ったのが2020年の5月でした。その当時、初診の患者さんは40~45%程度、通院中の再診の患者さんは20~25%程度減りました。その後、2021年の受診者数は、2019年度をベースとすると総じて5~10%ほどの減少で推移したといわれています。
●背景はコロナリスクの重視
受診控えが起きた背景は、自分がもっている疾患の増悪リスクを過小評価し、逆に出歩いたり、病院に行くことによりコロナに感染するリスクを過大に評価した結果だと思います。さまざまな情報を冷静に受け止め、考えて行動した人は受診を続けていました。コロナのリスクを強調し過ぎた報道の影響もあるでしょう。
●受診控えで持病が悪化した例も
高血圧や糖尿病といった慢性疾患は、自覚症状がないことが多く、コロナ感染のリスクをとって受診控えした人も多いようです。日本医師会の糖尿病データベースによると、およそ2割が定期通院の頻度を延ばしたと報告されており、その人たちには、糖尿病の指針であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の増悪や血圧の上昇がみられました。逆に、以前と変わらずに通院していた人たちの多くには悪化が認められませんでした。
●持病のコントロールが重要
糖尿病、高血圧などの慢性疾患を治療する目的は、5年先や10年先、ひいては20年先に起きうる脳梗塞や心筋梗塞の発症を予防することです。高血圧や高血糖の状態を放置すると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がっていくので、今症状がなくてもそのことを軽視せず、今ある生活習慣病のコントロールを心がけることが重要だと思います。また基本的なことですが、生活習慣としては規則正しい生活やバランスのとれた食事を心がけることが大切です。
監修
横浜市立大学 医学部医学科 肝胆膵消化器病学
日暮琢磨