新型コロナウイルスの治療薬の現状 ~今後の見通しは?
最終編集日:2022/10/13
●おもな治療薬は3種の抗ウイルス薬
新型コロナウイルス感染症の薬物治療は、ウイルスへ直接作用する抗ウイルス薬と抗体療法、ウイルス性肺炎の炎症を抑える免疫抑制療法が軸となっており、2020年以降、そのスタイルは大きく変わっていません。抗ウイルス薬や免疫抑制剤のみでの治療が困難な重症の方には、人工呼吸器の使用や伏臥位療法(体の向きを変えることで肺を守る)といった支持治療が中心になってきます。
現在、おもに使われている治療薬は、抗ウイルス薬としてのレムデシビル、ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)、モルヌピラビル(ラゲブリオ)と抗体療法があります。前者3者のウイルス薬は変異株の出現によっても有効性が維持されると報告されています。診断からできるだけ早く必要とする患者さんに投与する仕組みを作ることが大切です。抗体療法に関しては、1回の点滴投与で治療が終了するメリットがありますが、新しい変異株に関しては有効性が低下することがあり、変異株に有効な薬が出てくるかどうかが課題となります。
リスクのない軽症の方はほとんどが治療薬を投与されていません。海外では(インフルエンザ同様)軽症には薬は投与しないことが大前提になっており、治療薬の効果に関するデータもほとんど出ていません。日本から相当よいデータが出ない限り、軽症者には薬は使わない方針は大きく変わらないと思われます。
●マスクの着用とワクチン接種、基本的な防護策が引き続き重要な理由
個人の治療と同時に、社会全体としては感染者の総数を減らすこと、個人としての感染対策を続けることが新型コロナウイルス感染症の対策の根底になります。1つはマスクの使用です。マスクはエアロゾルの拡散を防ぐ非常に有効な手段で、換気の悪い場所や人と接する場所で互いにしっかりマスクをつけることが必要です。
もう1つがワクチン接種です。新しい変異株の主流がオミクロンBA.2からBA.5になり、ワクチンによる感染予防効果は低下していますが、重症化を予防する効果は長続きし、変異株が出現しても強く残るといわれています。
けっきょくは、マスク着用とワクチン接種が感染対策の二大柱です。
社会として新型コロナウイルスとどう共存していくか、新しい社会の常識やマナーを考えていく段階にあると思います。
今後、新型コロナウイルスは社会に完全に定着し、誰でも感染し、年に1回、あるいは数年に1回と定期的に感染するウイルスとなることが予想されます。今はちょうどその転換期で、この秋冬は非常に難しい選択を迫られますが、まずはマスク着用の継続とワクチン接種の推進に努めることが重要だと考えています。
※2022年10月10日時点の内容です。
監修
横浜市立大学附属病院感染制御部 部長
加藤英明
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