単純ヘルペス

たんじゅんへるぺす

概要

単純ヘルペスウイルスの感染よって起こる病気で、口元、目の周り、指先、性器などに小さな水疱（水ぶくれ）やびらんが現れます。

非常に感染力が強く、患部、唾液、皮膚表面などに存在するウイルスに接触することでからだのどこにでも感染します。

一度感染すると、症状が治まってもウイルスは神経節に隠れてしまい、完全に排除されることはありません。発熱などでからだの抵抗力が落ちたときに、再び活性化して、何度でも再発をくり返すという特徴があります。

原因

人に感染するヘルペスウイルスは8型まであり、そのうちの1型と２型が単純ヘルペスウイルスによるものです。１型、２型ともに感染しても症状が出るとは限りません。しかし一度感染すると、ウイルスは神経節に潜伏し、感染は生涯にわたります。かぜや疲れ、ストレスなどで抵抗力が落ちたとき、強い紫外線で誘発されたときに、ウイルスが再活性化します。症状が治まってもウイルスは潜伏し続けるため、再発をくり返します。また、無症状時にも他人にうつす強い感染力をもっています。

●単純ヘルペスウイルス1型

多くは小児期にウイルスを獲得します。口腔内もしくは唇（ヘルペス性歯肉口内炎、口唇ヘルペスなど）、目の角膜（角膜ヘルペス）など上半身に症状が出やすく、おもに口と口の接触によって感染します。また、性器ヘルペスの原因はおもに2型ですが、オーラルセックス（口と性器との接触）を通して1型が性器ヘルペスをひき起こすケースもあります。

●単純ヘルペスウイルス2型

性交渉による皮膚や粘膜、体液との接触で感染し、性器ヘルペス、ヘルペス性髄膜炎などをひき起こします。

症状

●ヘルペス性歯肉口内炎

かゆみやチクチク感、不快感、発熱、頭痛、全身の痛みを前触れとして、口の内側に痛みのある水疱や潰瘍が多数できます。治るまでに10～19日かかりますが、ひどく悪化して飲食が非常に困難になることがあります。乳幼児が1型に初感染した際にもっとも多くみられる症状です。

●口唇ヘルペス

通常1カ所に水疱ができます。発症する前には、その部位にぴりぴりした感じが数分から数時間つづき、次第に赤く腫れてきます。その後、水疱になり、それが破れてびらんになります。すぐにかさぶたになって、5～10日でとれて治ります。

●性器ヘルペス

水疱や赤いブツブツ、びらん（皮膚のただれ）などがみられ、初感染では排尿や歩行が困難になるほどの強い痛みと発熱が伴うこともあります。女性に多く発症します。

●新生児ヘルペス

出産時に母親が性器ヘルペスを発症している場合、新生児が産道で感染することがまれにあります。生後数日で高熱やけいれん、呼吸不全、さらに脳や脊髄に感染して麻痺などの後遺症を残すヘルペス脳炎をひき起こすこともあります。

再活性化した場合は、小さな水疱ができるだけの軽い症状で済むことが一般的で、2週間ほどでかさぶたができて症状は治まります。

検査・診断

皮膚の症状と自覚症状、初感染か再発か、などで診断されます。

単純ヘルペスと似た症状を生じる疾患（帯状疱疹・毛嚢炎・とびひなど）との鑑別や、分娩時の母子感染を避けるためなど、確実な診断が必要な場合には次の検査を行います。

・水疱から採取したサンプルでウイルスの抗原を確認する

・血液検査により、単純ヘルペスに対する抗体を検出する

・脳への感染が疑われる場合は、MRI検査に加えて、髄液を注射針で吸い出す腰椎穿刺を行う

治療

単純ヘルペスウイルスを根治できる抗ウイルス薬は今のところなく、一次感染の症状を治療しても再活性化を予防することはできません。

ウイルスの増殖を抑え症状を緩和するために、抗ヘルペスウイルス薬を外用、もしくは内服します。まれに重症例では抗ヘルペスウイルス薬を点滴することもあります。

また、必要に応じて鎮痛剤や、症状の広がりにあわせてぬり薬を使用します。

セルフケア

療養中

・単純ヘルペスウイルスは、症状が現れたときがもっとも感染力が高いため、患部に触れた後はしっかりと手を洗う

・口腔や唇にヘルペスの症状が現れているときには、他人との接触や唾液が触れたものの共用を避ける

・パートナーの性器にヘルペスがうつることを避けるために、オーラルセックスを控える

・性器ヘルペスの症状が現れているときは、性交渉を控える

予防

・日頃から免疫機能を低下させないように、食生活や睡眠、適度な休養など生活習慣に配慮する

・紫外線も再活性化の誘因となるため、日光（紫外線）に当たりすぎない