皮膚黄色腫ひふおうしょくしゅ
最終編集日:2025/2/18
概要
皮膚黄色腫とは、脂質を貪食したマクロファージ(白血球の一種)が皮膚の真皮に蓄積した皮疹を指します。脂質異常症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)を伴うものと、そうでないものに分けられます。
病変の現れ方によって、発疹性黄色腫、腱黄色腫、結節性黄色腫、扁平黄色腫(眼瞼黄色腫を含む)、疣状(ゆうじょう)黄色腫などがあり、頻度が高いのは眼瞼黄色腫です。
皮膚黄色腫の多くは成人期に発症しますが、家族性高コレステロール血症に伴う黄色腫は、小児期に出現することがあります。
なお、先天的な遺伝子の異常が原因の脳腱黄色腫症という非常にまれな病気もあり、厚生労働省の指定難病になっています。
原因
脂質(中性脂肪、コレステロールなど)の代謝異常が原因になることがありますが、原因が不明な場合もあります。
高中性脂肪血症に伴うものとして発疹性黄色腫が、高コレステロール血症でみられるものとして腱黄色腫、結節性黄色腫、扁平黄色腫が挙げられます。
症状
発疹性黄色腫では殿部、四肢に1~5mmの淡紅色から黄色の丘疹(わずかに盛り上がった皮疹)が現れます。結節性黄色腫はひざ、ひじ、指に数cm大までの結節(しこり)がみられます。腱黄色腫はアキレス腱など四肢の腱が厚く大きくなります。扁平黄色腫は全身に扁平な黄色斑がみられ、そのなかでも頻度の高い眼瞼黄色腫では上まぶたの目頭側に皮疹が現れます。疣状黄色腫は口腔内や陰部に、カリフラワー状の小結節ができます。
検査・診断
特徴的な病変でおおよその診断をつけ、血液検査で中性脂肪やコレステロールなどの脂質異常の有無を調べます。確定診断として、病変の組織を採取して病理検査を行い、脂質を含むマクロファージの存在を確認することもあります。
皮膚黄色腫は原発性脂質異常症や家族性高コレステロール血症など遺伝性疾患の一症状として現れることがあります。また、糖尿病や褐色細胞腫などの内分泌疾患、腎臓の病気が原因で脂質異常症を起こしている場合もあるため、それらの病気の存在も確認します。
治療
脂質異常症があれば、それに対する薬物療法を行います。黄色腫への効果がみられるまで、数カ月はかかるとされています。
また、レーザー治療や凍結療法、手術などで、病変を切除する治療も行われます。とくに眼瞼黄色腫では、審美的な観点から検討されることが多いようです。しかし黄色腫は切除後に再発することがあります。
脂質異常症がない場合でも、一部の高コレステロール血症改善薬が有効な場合があります。
セルフケア
予防
上記のような皮疹に気づいたら、まず皮膚科を受診しましょう。皮膚黄色腫が疑われる場合は、必要に応じて、血液検査や内科への紹介が行われます。
なかには皮膚黄色腫がきっかけで脂質異常症が見つかるケースもあるでしょう。脂質異常症はそのほかの症状に乏しい病気ですが、放置すると動脈硬化が促進されて、心臓や脳の血管障害をひきおこすリスクが高くなります。改善のためには、薬だけに頼るのではなく、以下のような生活習慣の見直しが必要です。
・動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品を食べすぎない
・魚(とくに青魚)、豆類、野菜、果物、海藻を積極的にとる
・食べすぎ、飲みすぎに注意して、適正体重を維持する
・適度な運動を継続する
・禁煙
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑 慎司