口唇ヘルペスこうしんへるぺす
最終編集日:2023/3/23
概要
口唇ヘルペスは「単純疱疹(たんじゅんほうしん)」に分類される病気です。単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染して、唇の周囲に水ぶくれ(水疱)が現れます。HSVはHSV-1とHSV-2の2種類があり、口唇へルぺスはHSV-1によって発症します。
HSV-1は身近に多く存在するウイルスで、かつては成人を迎える前にほとんどの人が感染すると考えられていました。しかし日本皮膚科学会によると、最近は成人でもHSVの抗体保有率は45%程度と低下しています。
HSVは口唇のほかにも、顔面や目、耳、歯肉(口内)、手指、性器、臀部など、全身に感染巣をつくりますが、口唇ヘルペスがもっとも患者数が多いとされています。
原因
HSVに感染して起こります。最初の感染は、水疱などの病変部やウイルスに汚染された手指などとの接触感染や、唾液などの飛沫感染が考えられます。感染後、1週間以内に発症することがほとんどですが、最初の感染では無症状のまま経過することもあります。
最初に感染して症状が治まった後も、HSV-1は体内から撃退されるわけではなく、神経節に潜んでいます。何らかの原因で抵抗力が低下した際に活性化し、再発をくり返します。再発のきっかけとして、発熱、かぜなどの感染症、ストレス、過労、紫外線を多く浴びたなどが考えられます。
症状
唇の周囲に、赤みや発疹が現れ、小さな水ぶくれ(水疱)になります。水疱はピリピリ、あるいはチクチクした痛みを伴います。水疱はいくつもできて、それが合体して大きな水疱になることもあります。
水疱のある時期がもっともウイルス量が多く、人への感染力も強い時期です。赤みや水疱が現れてから約2週間で水疱はかさぶたになり、多くは治療しなくても自然に治癒していきます。
再発のケースでは皮膚の病変が現れる前兆として、唇の周りにピリピリ・チクチクした痛がゆさを感じることがあります。
検査・診断
口の周りに密集する小水疱がみられれば診断は容易ですが、診断がむずかしい場合は、水疱の内容液をとってウイルス感染の有無をみます。
治療
抗ウイルス薬の外用薬(軟膏)、あるいは内服薬を用います。
水疱に触ったり、水疱を破いたりすることはやめましょう。ウイルスの感染を広げてしまいます。水疱に触った後は手を洗います。また、症状がある間は、食器やタオルをほかの人と共用することは避けます。使った後は通常どおり洗剤で洗います。ほかの人の食器やタオルと一緒に洗ってもかまいません。
セルフケア
予防
体力や抵抗力が低下すると、口唇ヘルペスを発症しやすくなります。十分な休養や睡眠、バランスのよい食事をとり、ストレスや疲労をためないようにしましょう。
再発のケースでは、軟膏を市販薬として薬局で購入することができます。唇の周りに発症の前兆を感じたら早めに塗布すると、重症化を防げます。
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑慎司
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