白血病
はっけつびょう

最終編集日:2024/3/26

概要

赤血球、白血球、血小板などの血液細胞は、骨髄に存在している造血幹細胞が分化してつくられます。白血病は分化のいずれかの段階の血液細胞ががん化して無制限に増殖する「血液のがん(造血器悪性腫瘍)」です。

白血病にはさまざまなタイプがありますが、おもなものは「急性骨髄性白血病」「急性リンパ性白血病」「慢性骨髄性白血病」「慢性リンパ性白血病」です。特殊なタイプとして「成人T細胞白血病」もあります。白血病の10万人あたりの年間罹患率は11.3人。男性13.7人、女性9.1人で、男性に多く発症しています(2019年がん種別統計)。乳児から高齢者まで、幅広い世代で発症しますが、50代後半から患者数が増え始めます。

原因

遺伝子の突然変異が原因ですが、なぜ変異が起こるかは解明されていません。放射線治療や、がん化学療法の既往、特定の化学物質に長時間触れることなどが発症の誘因になることがあります。また「成人T細胞白血病」では、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染が原因となることがわかっています。HTLV-1は、性行為、輸血、母子感染などが感染経路として挙げられます。

白血病
白血病

症状

急性白血病では、白血病細胞が増殖する一方で正常な赤血球、白血球、血小板が減少するため、次のような症状が現れます。貧血症状(立ちくらみ、めまい、息切れ、動悸、倦怠感など)、発熱、肺炎などの感染症にかかりやすくなる、鼻や歯肉からの出血、あざができやすい、血が止まりにくい、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れなど。

慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病では、初期には症状が現れにくく、ある程度進行すると、上記のような症状が起こります。無症状のまま、健康診断などの機会に偶然に見つかることも多いです。

検査・診断

診断のために血液検査のほかに、骨髄穿刺を行い、骨髄液を採取して検査を行います。また、骨髄組織をとる骨髄生検が行われることもあります。また、治療方針の決定や治療法(薬剤)の選択のために、染色体検査や遺伝子検査が行われます。必要に応じてCTなどの画像検査も行われます。

治療

急性白血病の治療は「寛解導入療法(薬物療法で寛解〈完治ではないが白血病細胞が減少して正常の血液細胞が増えた状態〉をめざす)」につづいて「地固め療法(寛解状態をさらに確実なものにする)」が進められます。さらに「維持療法(白血病の再発予防が目的)」が行われることもあります。

治療の中心は薬物療法で、抗がん剤、分子標的薬などが用いられます。近年、新しい薬が複数保険適用となり、治療成績の向上が期待されています。

寛解が得られたら、完治をめざして患者さんの年齢、再発リスク、併発症、全身状態などを評価し、造血幹細胞を移植する「造血幹細胞移植(骨髄移植)」が考慮される場合もあります。難治性で薬物療法のみで治すことがむずかしい白血病に適応される場合もあります。移植は、患者さん本人の造血幹細胞を用いる自家移植、ドナーからのものを用いる同種移植があります。移植前に体内の白血病細胞を極力減らすために、大量化学療法(大量の抗がん剤を投与する)や全身放射線療法による「移植前処置」を行います。

慢性骨髄性白血病では、チロシンキナーゼ阻害薬という分子標的薬が用いられます。慢性リンパ性白血病では、無治療で経過観察されることもあり、身体所見や検査結果に応じて抗がん剤や分子標的薬などが用いられることもあります。

セルフケア

予防

白血病は診断や治療法の進歩によって、一部の患者さんでは完治が望めるがんとなりました。しかし、治療は強い副作用を伴うことが多く、高齢の患者さんでは体力の低下や併発疾患などによって治療に耐えられない可能性もあり、選択肢が限られる状況にあります。前述の成人T細胞白血病は、HTLV-1感染を防ぐことが発症予防につながりますが、そのほかの白血病は原因が明らかになっていないため、明確な予防法はまだありません。

年に1度は健康診断などで血液検査を受けましょう。倦怠感や貧血症状、かぜのような症状がしばらくつづく場合には、内科を受診して原因を探ることをおすすめします。また、どの病気の予防にもあてはまることですが、十分な睡眠・休養、栄養バランスのとれた食事、規則正しい生活、過労・ストレスの解消などで日頃から健康を維持するように心がけましょう。

監修

東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授

川田浩志

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