慢性リンパ性白血病
まんせいりんぱせいはっけつびょう

最終編集日:2025/12/8

概要

慢性リンパ性白血病(CLL)は、白血球のひとつであるリンパ球のうちの「Bリンパ球」が、がん化して起こる白血病です。50歳以降の中高年に多く、女性よりも男性に多くみられます。日本では欧米にくらべて患者数が少なく、全白血病の約1~3%程度です。

原因

慢性リンパ性白血病の原因は、現在のところはっきりとはわかっていません。しかし、欧米ではもっとも頻度の高い白血病(全白血病の約25~30%)である一方、アジアでは極めて少ないことが知られています。欧米に移住した日本人でも発症率は低いままであることから、生活環境よりも、遺伝的な背景(人種による体質の違い)が関与していると考えられています。

症状

初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断やほかの病気の治療中に偶然発見されることが多い病気です。病気が進行すると、リンパ節、肝臓・脾臓の腫れ、貧血や血小板減少による出血傾向(あざ、鼻血など)が現れます。 さらに、正常な抗体の産生が低下するため、肺炎帯状疱疹などの細菌・ウイルス感染症にかかりやすくなることがあります。さらに、体重減少、発熱、倦怠感といった全身症状が出現する場合もあります。

検査・診断

健康診断などで白血球(リンパ球)の増加を指摘された場合、詳細な検査を行います。

●血液検査とフローサイトメトリー検査

まず血液検査を行い、顕微鏡で細胞の形を調べます。さらにフローサイトメトリー検査を行い、増加しているリンパ球の表面にある目印(CD5、CD23などの抗原)を解析します。Bリンパ球数が5000/μL以上増加しており、かつフローサイトメトリー検査で慢性リンパ性白血病に特有のタイプであることが確認されれば、診断が確定します。

●骨髄検査と遺伝子検査

診断は主に血液検査で可能ですが、フローサイトメトリーの結果が典型的でない場合や、病気の進行度(病期)を正確に判定したり、治療方針を決定したりするために、骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)を行います。また、治療薬の選択や予後を予測するために、血液細胞の染色体や遺伝子の異常を調べる検査も行われます。

治療

慢性リンパ性白血病は進行がゆっくりであるため、早期で症状がない場合は、すぐに治療を行わず、定期的な検査を行いながら経過をみる「経過観察」が一般的です。これを不安に感じる患者さんもいますが、早期に治療を開始しても生存期間は変わらないことが分かっています。

以下のような状態がみられ、病気が進行していると判断された場合に、治療を開始します。

・貧血や血小板減少が進行した場合

・リンパ節や脾臓が著しく腫れたり、急激に増大したりした場合

・発熱、ひどい寝汗、体重減少などの全身症状が現れた場合

・リンパ球数が急激に増加した場合


●薬物療法(分子標的薬・抗体薬・化学療法)

近年、治療法は大きく進歩しています。現在は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子を狙い撃ちにする分子標的薬(BTK阻害薬やBCL-2阻害薬などの飲み薬)や、がん細胞表面の目印に結合して攻撃する抗体薬(点滴)が治療の中心となっています。これらを単独、または組み合わせて治療します。従来の抗がん剤(化学療法)も、患者さんの状態や年齢に応じて用いられることがあります。

●その他の治療

若年で非常に治りにくいタイプの場合など、ごく一部のケースでは造血幹細胞移植が検討されることもあります。

セルフケア

療養中

慢性リンパ性白血病の患者さんは、健康な人に比べて免疫力が低下しやすくなっています。治療をしていない経過観察中であっても、感染症予防が大切です。手洗い、うがいの励行、人混みでのマスク着用など、日常的な感染対策を心がけましょう。また、発熱などの体調変化があった場合は、早めに主治医に相談してください。

予防

慢性リンパ性白血病に対する確立された予防法はありません。一般的ながん予防と同様に、禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適度な運動などが推奨されます。

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監修

東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授

川田浩志