尋常性ざ瘡(にきび)じんじょうせいざそう
最終編集日:2022/5/11
概要
尋常性ざ瘡とは、毛穴に皮脂が詰まったり、毛穴のアクネ菌が炎症を起こしたりする皮膚疾患で、いわゆる「にきび」のことです。面皰(めんぽう:毛穴に皮脂が詰まった状態)から、炎症を伴う紅色丘疹(赤いブツブツ)、膿疱(うみがたまったブツブツ)へと進みます。
ホルモンバランスの影響を受けるため、おもに10〜20歳代にかけての思春期をピークに発症し、成人以降はしだいに減少していきます。適切なスキンケアと生活習慣を見直しながら、塗り薬や飲み薬で治療します。
原因
おもな原因は、ホルモンバランスの乱れ、皮脂の過剰分泌、毛穴出口の角化、細菌の繁殖です。ほかには遺伝子、年齢、食事、ストレス、化粧品などが発症にかかわります。はじめは毛穴に皮脂が詰まった状態、すなわち面皰ですが、面皰のなかでアクネ菌が増殖することで炎症が起こり、皮膚が赤く盛り上がったり(紅色丘疹)、うみをもった発疹(膿疱)ができたりします。
●思春期の到来
ホルモン(とくにアンドロゲン)の分泌が増加することによって皮脂腺が刺激されます。
●妊娠や月経
ホルモンバランスが不安定となり、ホルモン量に影響を与えます。
●生活習慣の乱れ
ストレス、睡眠不足、偏った食生活が皮脂の分泌量に影響を与えます。
●不適切なスキンケア
化粧品により毛穴が詰まると、尋常性ざ瘡の悪化の原因になります。一方で、過剰なクレンジングで必要な皮脂まで落としてしまったり、皮膚を強くこすりすぎて角質を傷つけてしまったりすることもまた、尋常性ざ瘡の悪化につながります。
●便秘
有害物質が体内にたまると、腸内の悪玉菌が増加し、新陳代謝が低下しますので尋常性ざ瘡が悪化します。
症状
皮脂の分泌が多い部分(ひたいや眉間、頬、背中など)に多くみられます。
●尋常性ざ瘡の種類
・白にきび(白色面皰、閉鎖面皰)
初期段階で炎症はなく、赤みや痛みはありません。
・黒にきび(黒色面皰、開放面皰)
炎症はありませんが、発生から時間が経過して毛穴にたまった皮脂が酸化して黒くなっている状態です。
・赤にきび(炎症を起こした閉鎖面皰、紅色丘疹)
白にきびなどが悪化し、脂腺性毛包(にきびができる毛穴)の皮脂にアクネ菌が繁殖して増え、炎症を起こしている状態です。皮脂が盛り上がって広がり、表面は赤くなります。
・黄にきび(膿疱)
赤にきびがさらに悪化して、盛り上がった表面の先に黄色いうみが見える状態です。皮脂とうみが皮脂腺を破り、炎症が広がります。悪化して真皮層や皮下組織を損傷すると、あとが残る可能性もあります。
・嚢腫
皮膚の深いところにうみがたまった状態です。
・結節
さらに重症化し、まわりが硬くなった状態です。
軽度の白にきびや黒にきびは、通常は瘢痕(はんこん:にきびあと)が残らずに治ります。しかし、赤にきびをつぶして無理やりうみを出そうとすると、炎症が悪化し皮膚の傷が深くなるため、瘢痕が残りやすくなります。
重度の嚢腫は破裂し、治った後も皮膚の陥没、色素沈着として残ることが多く、炎症が長引いたり強かったりするとケロイド状の瘢痕となることもあります。
検査・診断
おもに問診と視診で診断します。問診では、いつ頃から発症したか(気になり始めたか)、症状はどのように変化しているか、生活習慣の乱れはないか、塗り薬などを使用していたかなどがポイントになります。
女性の場合は、月経不順があるかどうかなどの月経周期についても確認します。
視診では、皮膚症状の分類と、顔面片側の炎症性皮疹(赤にきび、黄にきび)の数に応じて重症度を分類します。
治療
基本は、毛穴に詰まった皮脂を取り除くことと、アクネ菌に対する治療です。進行度によって治療法が異なります。
●炎症がない面皰(白にきび、黒にきび)
アダパレン、過酸化ベンゾイルなどの塗り薬が処方されます。
毛穴に詰まった皮脂を押し出す処置である面皰圧出療法や漢方薬の処方が行われることもあります。
●丘疹・膿疱など炎症がある場合
炎症がない面皰と同様に、アダパレン、過酸化ベンゾイルの塗り薬、また抗菌薬の塗り薬や飲み薬や漢方薬が処方されます。
●嚢腫・結節を形成した場合
抗菌薬の飲み薬が処方されます。ステロイドの局所注射や切開してうみを出す手術を行うこともあります。
●尋常性ざ瘡の瘢痕
ケミカルピーリング、レーザー治療、削皮術(さくひじゅつ)、マイクロニードリングなどが行われます。
セルフケア
予防
まずは生活習慣の見直しが大切です。ストレスや睡眠不足を軽減し、高脂肪・高カロリーの食事を避け、ビタミンの豊富な緑黄色野菜や便秘予防に効果的な食物繊維などをとるように心がけましょう。適度な洗顔(泡でやさしく包みこむように洗う)で清潔さを保ち、洗顔後には十分な保湿を行うことが大切です。
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑慎司
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