原田病
はらだびょう

最終編集日:2022/4/11

概要

原田病(フォークト-小柳-原田病)は、全身にあるメラニン色素をつくるメラノサイトと呼ばれる細胞を、自分自身の免疫が攻撃する自己免疫疾患です。

メラノサイトが多く存在する目のぶどう膜や、毛髪、皮膚、耳、脳の髄膜などに炎症が生じます。メラニン色素の多い東洋人に多く、日本ではとくに両目のぶどう膜に急性の網膜剥離を発症することが多くみられます。

大量のステロイド剤の投与による治療で、多くの場合は数カ月程度で回復しますが、一部で再発するケースもあります。


原因

原田病は、本来外部から侵入した細菌やウイルスといった病原体を攻撃する免疫機能が、自身のメラニン色素をつくるメラノサイトという細胞を攻撃してしまう自己免疫反応によって起こります。なぜ自己免疫が生じるかはわかっていませんが、白血球のヒト組織適合抗原(HLA)のうち、DR4やDR53という型をもつ人に発症しやすいため、遺伝的要素が関与しているのではといわれています。

症状

原田病では、目の症状が現れる前に、頭痛やめまい、微熱、頭皮のピリピリ感、全身倦怠感といった前触れのような症状が起こることがあります(前駆現象)。前駆現象から1~2週間後に、両目に痛みや充血、かすみ、ものがゆがんで見えるといった症状が急激に現れ、さらに網膜剥離による急激な視力低下が生じます。また、炎症が耳の内耳に起こると、感音性難聴、耳鳴り、めまいなどがみられることがあります。

目の炎症は2カ月程度で治まりますが、眼底の色素脱落(夕焼け眼底)や、皮膚が白くなって白斑ができたり、髪が白くなったり、抜けたりするなどの症状が起こることがあります。


検査・診断

原田病のおもな症状は目に起こるため、眼科の検査を中心に行います。

まず細隙灯顕微鏡(目に細い光をあてて状態をみる)による検査、眼底検査といった一般的な眼科検査に加えて、光干渉断層計(OCT)検査(眼底の断層をみる)、蛍光眼底造影検査(腕の静脈から蛍光色素を注射して眼底をみる)などを行います。このほか、髄液を採取して調べる髄液検査や、聴力検査などで診断します。


治療

原田病の治療ではステロイド剤の大量投与を行います。大量のステロイド剤を3日間点滴投与し、炎症の状態を確認しながら、少しずつ量を減らしていきます。

ステロイド剤の使用が長期に及ぶと、高血圧や高血糖、不眠、興奮といった精神症状、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死などの副作用が生じることがあります。このため、治療が長期になる場合は、全身の副作用を軽減するために免疫抑制剤を使用したり、骨粗鬆症の予防薬、ステロイド剤と散瞳薬の点眼などを必要に応じて行うことがあります。


セルフケア

療養中

ステロイド剤を用いた免疫抑制療法は副作用を認めることがありますが、自己判断で薬を減量したり中止したりせずに医師の指示どおりに薬を使用しましょう。



予防

原田病ではいかに治療を早く開始できるかが、視力の維持にかかわってきます。治療が遅れると炎症が慢性化しやすくなり、視力の低下につながります。予防がむずかしい病気ですが、視力低下など目の異常がみられたら際は、できるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。

監修

井上眼科病院 院長

井上賢治

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