ぶどう膜炎
ぶどうまくえん

最終編集日:2022/4/7

概要

眼球を包む膜は3層構造をしており、真ん中の膜をぶどう膜と呼びます。ぶどう膜は、①虹彩(瞳孔の周りにある茶色い部分。外から入る光の量を調整する)、②脈絡膜(眼球の後ろ側を包む膜。暗幕の働きをし、血管やメラニン色素が多く存在する)、③毛様体(虹彩と脈絡膜をつなぐ部分。毛様体にある毛様体筋はピントをあわせる調節作用をもつ)の3つの部分からなります。

ぶどう膜炎はこのぶどう膜に炎症が起きた状態で、目だけでなく、全身のさまざまな病気が原因となることがあります。全体的に40~50代に多くみられますが、原因疾患によっては20~30歳代に好発するものもあります。男性にくらべて女性のほうが若干、患者数が多いとされています。


原因

ぶどう膜に細菌などが感染して起こる「感染性ぶどう膜炎」は、細菌のほか、ウイルスや真菌、寄生虫などによってもひき起こされます。もっとも頻度が高いのはヘルペスウイルスによるものです。最近は患者数が減少していますが、結核やトキソプラズマによるものもあります。

全身性の疾患から起こる「非感染性ぶどう膜炎」では、おもに自己免疫疾患が原因として挙げられ、とくにサルコイドーシス、フォークト-小柳-原田病(原田病)、ベーチェット病は三大ぶどう膜炎と呼ばれています。

●サルコイドーシス

リンパ球などのかたまりである肉芽腫が全身の臓器(リンパ節、目、肺など)にできる原因不明の病気で、厚生労働省の指定難病になっています。ぶどう膜炎の症状をきっかけに発見されるケースが多く、目ではぶどう膜炎のほかに、硝子体混濁や黄斑浮腫、網膜血管周囲炎など、さまざまな病態を現します。目の症状のほかは自覚しにくい場合が多く、健康診断で見つかることも多い疾患です。好発年代は20~30歳代、もしくは50歳前後となっています。

●フォークト-小柳-原田病

メラノサイト(色素細胞)に対して免疫反応が起き、その原因はまだわかっていません。ぶどう膜炎の症状は通常、両目に現れ、そのほかには発熱、のどの痛み、頭痛、めまい、頭皮のピリピリ感などが現れることがあります。

●ベーチェット病

口腔のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状(皮疹、病変部の痛み、過敏症など)、目の症状が特徴的に現れる原因不明の炎症性疾患で、厚生労働省の指定難病になっています。ぶどう膜炎症状は両目に現れ、眼発作と呼ばれる急激な増悪と寛解をくり返します。再発しやすく、放置すると視力障害が治らないこともあります。20~30歳代が好発年齢です。


そのほか、膠原病、糖尿病、悪性リンパ腫なども原因となります。

ただ、ぶどう膜炎の原因疾患は30種以上あるとされ、特定はむずかしいことも多く、約4割は原因不明とされています。


ぶどう膜炎(サルコイドーシス)
ぶどう膜炎(サルコイドーシス)

症状

霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)、羞明(まぶしい)、充血、飛蚊症(視野に蚊が飛ぶような点が見える)、視力障害などが現れます。重症になると、目の疼痛を伴い、失明に至るケースもあります。

検査・診断

通常の視力検査、眼底検査のほかに、蛍光眼底造影や光干渉断層計による検査などを用いて、ぶどう膜のどの部分に炎症が起きているか、感染性か非感染性か、眼底や網膜、視神経の様子などをくわしく調べます。感染性の場合、眼内液から病原体を検出して特定します。

治療

感染性ぶどう膜炎では、感染源にあわせて、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬の点眼薬などを用いて抗炎症治療を行います。

非感染性ぶどう膜炎では、抗炎症治療としてステロイド投与が第一選択となります。点眼薬のほかに、重症例には局所注射やステロイドの全身投与も行われます。あわせて原因疾患の特定を行い、それに沿った治療を行います。


セルフケア

予防

感染性ぶどう膜炎の場合、外傷や目の手術後に起こることが多いようです。また前述のように全身性の疾患が原因のことも多いため、見え方の異常や違和感が現れたら、早めに眼科を受診するようにしましょう。

監修

井上眼科病院 院長

井上賢治

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