角膜ヘルペス
かくまくへるぺす

最終編集日:2023/5/30

概要

角膜はいわゆる黒目の部分で、直径10㎜前後、厚さ約0.5㎜の円形をしています。レンズとして目に入る光を屈折させる、角膜内部の水分を一定に保って目の表面を支持する、細菌などの侵入を防ぐ、などの働きをしています。

角膜ヘルペスは、角膜に単純ヘルペスウイルスが感染して起こる病気です。ヒトに感染する単純ヘルペスウイルスにはいくつか種類があり、そのなかの1型が目の周辺や口唇に感染し、角膜ヘルペスや口唇ヘルペスを発症させます。

角膜ヘルペスにはいくつかのタイプがあり、上皮型と実質型がよくみられます。

原因

成人の大部分は1型ヘルペスウイルスに気づかないうちに感染し、症状もなく終わります(不顕性感染)。しかし、ウイルスは体内から排除されず、三叉神経節という目の後ろにある神経節に潜んでいます。健康なときには発症しませんが、かぜなどの感染症、発熱、強い日光を浴びる、過労、ストレスなどによって免疫力や体力が低下すると、三叉神経節に潜む単純ヘルペスウイルスが再活性化し、角膜ヘルペスが起こります。

症状

上皮型は、片方の目の角膜表面に発症します。目の異物感(目がごろごろする)、涙目、充血、まぶしさが現れます。

実質型は、角膜の内部(実質)に発症します。充血と目の痛み、視力低下が起こります。目の痛みは首から肩にかけて放散痛となって現れることもあります。上皮型よりも炎症症状が強く現れます。

検査・診断

問診、視診、視力検査のほかに、細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)で、角膜上に潰瘍が認められるか(上皮型)、実質部分の混濁が認められるか(実質型)を調べます。これらの検査で多くは診断が可能ですが、疑わしい場合には、角膜を擦過(削り落と)して細胞を採取し、ウイルスの存在を確認します。確定診断のために、必要に応じて、蛍光抗体法や定量的PCR法と呼ばれる検査を行うこともあります。

上皮型と実質型の見極めはむずかしく、治療の選択を誤ると悪化するケースもあることから、慎重に診断されます。

治療

治療は抗ウイルス薬の眼軟膏が基本になります。


●上皮型

抗ウイルス薬(アシクロビル)の眼軟膏を用いるのが一般的です。また、細菌による混合感染を防ぐために抗菌薬の点眼を併用することもあります。2週間程度で改善されますが、約25%に2年以内の再発がみられるため、注意が必要です。再発をくり返すと、実質型に移行するケースもあります。抗ウイルス薬の効果が認められない、目の痛みや視力低下が現れ始めたなどの場合は実質型への移行のサインととらえて、早めに専門医に相談しましょう。

●実質型

実質型では、抗ウイルス薬の眼軟膏のほかに、炎症を抑えるステロイドの点眼薬も併用します。治療後も角膜に濁りが残ることがあり、視力の回復が見込めない場合には、角膜移植を検討するケースもみられます。

●上皮型と実質型の併発時

併発がみられる際には、通常、抗ウイルス薬で上皮型の改善を優先し、その後でステロイド薬を用います。ステロイド薬が上皮型の症状を悪化させるリスクがあるためです。

セルフケア

療養中

角膜ヘルペスは上皮型で軽症であれば完治しやすいですが、実質型や上皮型で再発をくり返すものや、治療開始が遅れた場合には、治療が長期にわたることもあります。眼軟膏を1日に何度も塗布する(通常は1日5回)治療をきちんと続けられない人も少なくありません。しかし、適切な治療を適切なタイミングで行わないと重症化につながり、視力低下を招く事態に陥ってしまいます。医師の指示の下、焦らずに治療をつづけましょう。

監修

井上眼科病院院長

井上賢治

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