鼠径ヘルニア
そけいへるにあ

最終編集日:2022/4/4

概要

鼠径部と呼ばれる足の付け根に現れるヘルニアの総称で、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3種類があります。

本来なら腹部に収まっているべき腸などの臓器の一部が鼠径部のトンネルから皮膚の下に出てくる病気です。太ももや足の付け根の部分に軟らかいふくらみが生じることで気づきます。

50歳以上の男性に多く、とくに肥満傾向のある人がなりやすいといわれています。


原因

鼠径ヘルニアを発症する原因としては、先天性と後天性があります。

先天性の鼠径ヘルニアは、出生後に本来は退化消失するはずの器官が消失せず、腹膜に穴として残ってしまったために起こります。

後天性のものは、加齢によって筋膜や筋肉が弱くなることや、慢性的なせき、便秘、腹圧のかかる仕事や運動が原因と考えられます。

また、鼠径部のどの部分にヘルニアが発症するかによって、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3つに分けられ、年齢や性別によってなりやすいタイプが違います。

●外鼠径ヘルニア

鼠径管というトンネルのすき間から出てくるタイプです。男性に多くみられます。

●内鼠径ヘルニア

鼠径管を通らず筋肉層の切れ目から出てくるタイプです。高齢者の男性に多くみられます。

●大腿ヘルニア

大腿管と呼ばれるトンネルから出てくるタイプです。発症率は低めですが嵌頓(かんとん)状態になりやすいです。中年以降の女性に多くみられます。


鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニア

症状

鼠径ヘルニアになると、太ももや足の付け根の部分に、しこりのような軟らかいふくらみがみられるようになります。

初期症状としては、痛みなどを感じない場合が多くあります。立っているときは足のつけ根にあるふくらみのせいで違和感があるのに、横になるとふくらみが消え、違和感がなくなるというように、姿勢によって感じ方が変化するのが鼠径ヘルニアの症状の特徴です。

腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が出てきたら要注意です。腸などが鼠径部に開いている鼠径管というトンネルにはまり込んで嵌頓状態となり、血液が通わなくなると壊死してしまいます。この状態になった場合には、緊急手術が行われます。

初期の鼠径ヘルニアの症状は、押すともとに戻る軟らかいふくらみ、突っ張り感、不快感や違和感などです。

進行した鼠径ヘルニアでは、ふくらみが硬くなりもとに戻らなくなる、強い痛み、吐き気などがみられます。


検査・診断

鼠径ヘルニアは、外側からでもふくらみが確認できることが多いため、問診と視診、触診で診断します。立った状態で腹に力を入れてもらうなどして、ふくらみの状態を確かめます。

これらの診察だけでは、鼠径ヘルニアの種類までは確定できないこともあります。その場合には、超音波検査やCT検査などの画像検査を行います。全身状態を確認するために血液検査が行われることもあります。


治療

子どもと大人では治療方法が異なります。生まれて間もない赤ちゃんの鼠径ヘルニアは、生後6カ月までに自然に治る可能性があるため、経過観察しながら治療を進めます。

大人が鼠径ヘルニアを発症した場合は、自然に治ることはなく、手術による治療が行われます。手術の方法は大きく2つに分かれます。

ひとつはからだの組織を用いて穴をふさぐ方法です。直接縫合法といい、穴が小さい場合やどうしても人工物を用いたくない場合などに行われます。もうひとつの方法は、体内に埋め込んでも安全な手術用の糸などを使ってつくられた布(メッシュ)を用いて修復する方法です。

ほかにも鼠径部を3~5㎝ほど切開して行う方法と、腹に3カ所の小さな穴を開けて腹腔鏡で手術を行う方法などもあります。それぞれメリット・デメリットがあるので、医師とよく相談して決めましょう。


セルフケア

予防

鼠径ヘルニアは、子どもの場合は先天的なものが多く、大人の場合は加齢により筋膜が弱くなることが原因とされています。鼠径ヘルニアの症状が出てからではコントロールするのはむずかしくなります。症状が出る前に予防しましょう。

まずは便秘の解消です。日頃から食物繊維や発酵食品をとり、適度な運動をすることによって腸内環境を整えましょう。日々の快便によりいきむ機会を減らし、鼠径ヘルニアの予防をこころがけましょう。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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