腹壁ヘルニアふくへきへるにあ
最終編集日:2022/4/4
概要
腹壁ヘルニアは、横隔膜と足の付け根までの間の腹部に現れるヘルニアの総称で、臍(へそ)ヘルニア、上腹部ヘルニア、半月状線ヘルニア、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアが含まれます。
腹部の内側には腹膜という薄い膜があり内臓を包んでいますが、この腹壁をつくる筋肉に何らかの原因によって弱い部分ができ、そこに内臓などが入りこんでふくらむことで発症します。
先天性のもののほか、手術の後遺症として起こることもあります。女性よりも男性に多い病気です。
原因
腹壁ヘルニアは、腹壁の弱くなった部分に、内臓、おもに腸などの一部がはみ出ることによって生じます。
腹壁が弱くなる原因は、生まれつき、あるいは手術やけがで腹壁に傷がついたことなどがあります。腹壁ヘルニアのうち、腹壁瘢痕ヘルニアは、文字どおり腹部の手術の傷あとに発症し、手術後何年も経ってから現れることもあります。臍ヘルニアは、ほとんどが先天的ですが、肥満や妊娠のほか、長期腹膜透析がきっかけの場合もあります。また、排便時のいきみや激しいせき、重い荷物を運ぶなど、強い腹圧がかかると簡単に出てしまう場合もあります。
症状
ヘルニアになると、まず腸などの内臓がはみ出したあたりの皮膚が盛り上がってふくらんできますが、痛みなどはなく、ほとんどの場合は無症状です。
腸が腹壁にはまり込んでしまった場合には、腸閉塞を発症し、激しい腹痛や嘔吐、腹の張りなどの症状が現れます。腸閉塞によって腸の血流が悪くなると、腸が壊死することもあります。その場合には命にかかわることもあるので注意が必要です。
検査・診断
身体診察は、立った状態と仰向けに寝た状態で行います。腹壁ヘルニアの多くは、視診でふくらみが確認できるため、ほとんどの場合、医師による視診と触診で診断がつきます。
ヘルニアがわかりにくい場合や腸などが腹壁にはまり込んでいる場合などは、超音波検査やCT検査などの画像検査を行い、ヘルニアが発症している部位や広がり、腹膜炎の有無を調べます。全身状態を確認するために血液検査が行われることもあります。
治療
ヘルニアは一度発症すると自然に治ることはほとんどないため、治療には手術が必要です。ヘルニアはそのまま放置すると腸にむくみが生じ、ふくらみが大きくなります。大きくなればなるほど手術は大変になるため、できるだけ早めの処置が望ましいです。
なかには小さいままのヘルニアや自然に改善するヘルニアもあります。乳児の臍ヘルニアは数年以内に自然に消えるものが大半ですが、2歳くらいまでに消えない場合など、大きさによっては修復手術を行うことがあります。
腹壁ヘルニアの手術の方法は大きく2つに分かれます。ひとつは患者の組織を用いて穴をふさぐ方法です。直接縫合法といい、穴が小さい場合やどうしても人工物を用いたくない場合などに行われます。
もうひとつの方法は、体内に埋め込んでも安全な手術用の糸などを使ってつくられた布(メッシュ)を用いて修復する方法です。
セルフケア
病後
悪化させないためには、太らない、腹圧をかけない、1日1回以上、膨らんでいる部分を押して腹の中に戻すなどを行いましょう。日常生活で、重い荷物を持たなければならないなど、腹に力がかかる動作をする場合には、ふくらんでいる部分を上から手で押さえるようにしましょう。
予防
ヘルニアの多くは、腹・腹壁の筋膜や筋肉が緩むことで臓器を支える力が弱くなり、発症します。発症前ならば、腹筋トレーニングなどで筋力アップを図るのも効果的です。ただし、発症後は腹圧に負荷がかかるトレーニングをしてはいけません。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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