ヘルニアへるにあ
最終編集日:2023/3/30
概要
ヘルニアは、腹部の臓器、消化管が脱出することです。いろいろな種類があり、腹腔の外に飛び出る外ヘルニアと、腹腔にできた穴に入り込む内ヘルニアに大別されます。
代表的な外ヘルニアは、ヘルニアのなかで発症者がもっとも多い鼠径(そけい)ヘルニアです。いわゆる「脱腸」と呼ばれるもので、足の付け根(鼠径部)の下腹部側にこぶのような柔らかいふくらみが出現します。
一般に「でべそ」と呼ばれるのも外ヘルニアの一種で、へその部分に脱出する臍(さい)ヘルニアのことを指します。
内ヘルニアの例としては、胃の一部が胸部に入り込む食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアが挙げられます。ヘルニアは自然に元の位置に戻ることがなく、治療法は手術のみです。
鼠径ヘルニアをはじめとする外ヘルニアでは腸管が突出して戻らなくなる状態をヘルニアの嵌頓(かんとん)といいます。初期には、違和感がある程度の良性の病気ですが、放置して嵌頓を起こすと、患部が壊死して命にかかわるケースがあります。
原因
先天性の場合もありますが、多くは加齢や、腹部にかかる圧力(腹圧)によって、腹膜や筋膜、筋肉が緩んだり弱くなったりして臓器を支えられなくなることが原因となります。重い荷物を運ぶ職業や立ち仕事、激しいスポーツ、喫煙、肥満などは腹圧がかかりやすく、発症のリスクが高いとされています。
鼠径ヘルニアは発生する場所によって外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアに分けられ、中高年男性によくみられます。鼠径部より少し下の足側に脱出する大腿ヘルニアは、高齢女性に起こりやすく、大腿ヘルニアを含めて鼠径ヘルニアという場合もあります。
発生部位は大腸より小腸のほうが多く、大網という脂肪組織、膀胱などで脱出が起こることもあります。
症状
●鼠径ヘルニア
立っているときや腹部に力を入れたとき、患部がふくらんで違和感を覚えます。しかし、横になったり患部を手で押したりすると、腹部内に引っ込むのが特徴です。
●大腿ヘルニア
吐き気、足の痛みなどを生じる場合もあります。初期には痛みなどの症状は少ないことがほとんどですが、ふくらみが急に硬くなり、押しても引っ込まず、強い痛みが出たときは嵌頓を起こしている危険性があります。
●食道裂孔ヘルニア
無症状のことが多く、健康診断の画像検査などで発見されることがあります。重症化すると、腹痛や吐き気、胸焼けなどが生じます。また、逆流性食道炎(胃食道逆流症)との関連が注目されています。
検査・診断
外ヘルニアは特異なことがなければ、問診と視診・触診などによる身体所見で診断します。鼠径ヘルニアでは仰向けで診察して目立たなくても、立って腹圧をかけた状態で観察すると突出がはっきりします。
一方、内ヘルニアは内視鏡検査(胃カメラ)で診断します。ヘルニアの見分けがつきにくい場合や別の病気が疑われる場合は、超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査、血液検査などを行うこともあります。
治療
軽度であれば経過観察の場合もありますが、一度発症すると再発をくり返すため、手術によって患部を修復します。手術には、患部を切開する方法と腹腔鏡手術があり、日帰りも可能です。なお、ヘルニアの嵌頓はそのまま放置すると突出した腸管にむくみが生じ、徐々に大きくなって、手術も大がかりになってしまいます。
セルフケア
療養中
しばらくは、飲みすぎや食べすぎ、重い荷物を運ぶ、激しい運動といった腸や腹部に負担がかかることは控えましょう。おなかに力がかかる動作をするときは、患部を手で押さえるようにするとよいでしょう。もし嵌頓しても初期であれば、用手的圧迫(手で優しく押さえること)によって元に戻ることもあります。仰向けに寝て、ひざを立てて腹部の緊張を和らげ、優しく患部を手で押さえることで嵌頓が解除されます。しかし、痛みを伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
予防
先天性の場合もありますが、多くは加齢や腹圧がかかることで、腹膜や筋膜、筋肉が臓器を支えられなくなることが原因です。重い荷物を運ぶことや激しい運動、喫煙や肥満などの発症リスクを避けることが予防につながります。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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